【人の縁の物語】<52>イクジイ 生きがいに 子育て支援 自治体の講座開催増

赤ちゃんの人形を使ってオムツ替えの練習をする平嶋さん(右) 拡大

赤ちゃんの人形を使ってオムツ替えの練習をする平嶋さん(右)

 育児に参加するおじいちゃん世代「イクジイ」が増えている。高齢者の就労や共働き世帯への子育て支援につなげようという自治体の取り組みが背景にある。老いていく中で自らの生きがいをつくろう‐そんな気持ちも背中を押しているようだ。

 1月10日、福岡県筑後市であった「ふくおか子育てマイスター認定研修会」。福岡県久留米市の平嶋博記さん(64)が赤ちゃんの人形と向き合い、ぎこちない手つきで抱き方やオムツ替えの練習をしていた。

 研修会は県が2012年度に始めた。計7日間のカリキュラムで、もく浴の仕方や離乳食の食べさせ方、誤飲の対処法を保育士らから指導を受ける。修了すれば子育ての「マイスター」に認定される。

 就労支援でスタートしたが、参加者の動機はさまざまだ。子ども3人が独立した平嶋さんは専業主婦の妻に育児を任せきりだった。昨年10月の定年退職を機に「孫の成長を間近で見たい。正しい接し方を勉強したかった」と受講を思い立った。みやま市の大橋渡さん(72)は「夜勤やら勤務が不規則で大変そう。4歳の孫と一緒に遊ぶだけでも役に立つかも」と、共に看護師として働く長男夫婦を支えたくて申し込んだ。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、1947~49年生まれの「団塊の世代」が全員65歳以上になる2015年には、高齢者人口は現在より約200万人増えて約3400万人になる見込みだ。一方、内閣府の男女共同参画白書では、共働きは1980年の614万世帯から2012年には1054万世帯と約1・7倍に増えている。

 増え続ける高齢者のマンパワーを子育て世代の支援に活用できないか‐。NPO法人「エガリテ大手前」(東京)は5年前から、祖父や父親の子育て講座開催を自治体に呼びかけ、その数は北九州市や熊本市など全国約20に広がっている。

 古久保俊嗣代表(59)は「戦力外と思われていたおじいちゃん世代が子育てに参加することで世の中が動くと思った。育児は家事であり、会社人間で生活力が弱いとされてきた高齢男性の自活にもつながる」と力を込める。

 子育て支援を通じたネットワークも芽生えている。

 1月下旬。福岡市の健康づくりセンター「あいれふ」の幼児室。0~2歳児の7人が笑い転げたり、おもちゃ遊びに走り回ったり。エプロン姿の平川久男さん(66)ら5人のおじいちゃん、おばあちゃんは「子どもたちにパワーをもらっています」とニコニコ笑顔で子どもたちに接していた。

 昨春、県の子育てマイスターに認定された平川さんは“同級生”の男女20人でボランティア団体「あゆみ」を結成。母親たちが講座を受けている間、無償で子どもを預かっている。

 「反省会と称した飲み会やら、わいわい言いながら運営するのが楽しくて」。1年間で会員は50人を超えた。「保育所や幼稚園から声をかけられれば飛んでいきますよ。まだまだひと様のお役に立てると思ってますから」。平川さんは力強く語った。


=2014/02/04付 西日本新聞朝刊=

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