プラズマローゲン(ホタテ由来)のアルツハイマー病への有効性を臨床試験で確認。アルツハイマー病の新たな発症仮説「神経炎症・プラズマローゲン仮説」も提唱

-SPRINGER NATURE eBOOKに掲載-
一般社団法人プラズマローゲン研究会の臨床研究部代表である藤野武彦(九州大学名誉教授、医学博士)らの研究グループは、2007年より、プラズマローゲンと精神神経疾患の基礎研究及び臨床試験を重ね、その結果を海外の医学雑誌で公表してきました。
このほどプラズマローゲン(ホタテ由来)とアルツハイマー病に関する一連の研究の集大成として、下記内容がSPRINGER NATURE eBOOKに掲載(1)されましたので、ご報告いたします。

【1】 掲載された研究成果のポイント



【2】 本研究の意義
1. 現在、アルツハイマー病などの認知症に対する有効性が確認された薬剤は極めて少なく、その効果も十分とは言えません。今回のホタテ貝から抽出されたプラズマローゲンがヒト臨床試験でアルツハイマー病(軽症から重症まで)と軽度認知障害(MCI)において認知機能を有意に改善(2-4)したことは、画期的と考えられます。

2. これまでアルツハイマー病発症仮説として、アミロイド・カスケード仮説が広く受け入れられてきました。それは脳内でのアミロイドβの蓄積が引き金となり、神経細胞死や脳の萎縮をもたらし、認知症発症へ至るとするものです。しかし、この仮説に基づいてアミロイドβタンパクを阻害する薬の開発が行われてきましたが、有効性が得られず多くの開発がまだ成功していません。このことは、従来の発症仮説自体に問題があることを示唆しています。今回の「神経炎症・プラズマローゲン」発症仮説により、アルツハイマー病を含む精神神経疾患の予防・治療戦略への新たな展開が期待されます。実際、上記のプラズマローゲンがなぜアルツハイマー病に有効であるか、その理由はこの仮説で説明できます(1,5)。

【3】 詳細説明
1. ホタテ由来プラズマローゲンのアルツハイマー病への臨床試験による有効性の確認
(1)軽度認知障害(MCI)への効果(2)
軽度認知障害178名を対象とする多施設プラセボ対照二重盲検比較試験 [24週・1mg/日]を実施。MMSE-J(ミニメンタルステート検査:30点満点の認知症スクリーニング検査で点数が低い程、症状が重いとされる)で評価した。その結果、 MMSE-Jの11項目のうち、場所の見当識についてプラズマローゲン(Pls)投与群とプラセボ投与群の間に統計的に有意な差が認められた。また、時間の見当識については両群に有意差はなかったものの、プラセボ投与群では24週後に統計的に有意な低下がみられ、Pls投与群ではほぼ低下は認められなかった。
(2)軽度アルツハイマー病(AD)への効果(3)
軽度アルツハイマー病98名を対象に多施設プラセボ対照二重盲検比較試験 [24週・1mg/日]を実施。WMS-R(ウエクスラー論理的記憶検査)で評価した。その結果、77歳以下と78歳以上の年齢群で比較すると、77歳以下において、Pls投与群はプラセボ投与群と比較して統計的に有意な記憶改善が認められた。また、女性では年齢に関わらずPls投与群で有意な記憶改善が見られた。
(3)中等度及び重度アルツハイマー病(AD)への効果(4)
中等度AD 57名及び重度AD 18名を対象に多施設オープン試験 [12週・1mg/日]を実施。MMSEで評価。その結果、中等度ADでは、著明改善(4点以上up) 31%, 改善 (2-3点up) 21%, 変化なし (±1点) 36%, 悪化 (2点以上down) 12%と過半数で改善がみられた。重度ADでは、改善 29%、変化なし 53%、悪化 18%という結果であった。

2. 臨床試験結果によるアルツハイマー病の新たな発症仮説の提唱
アルツハイマー病の原因として、これまで最も有力な仮説としてアミロイド・カスケード仮説が広く受け入れられてきた。脳内でのアミロイドβタンパクの蓄積が引き金となり、神経細胞死や脳の萎縮をもたらし、認知症発症へ至るとする説である。[図のルート2.]
しかしながら、アルツハイマー病患者の死後脳を解剖するとアミロイドβタンパクの蓄積が認められない症例報告やその逆がかなりあること、今日までアミロイド・カスケード仮説に基づく治療薬としてアミロイドβ阻害薬の開発の成功事例がほぼないこと、などからこのアミロイド仮説はアルツハイマー病発症をよく説明できない。
一方、藤野らは2007年より、「神経炎症―プラズマローゲン減少―アルツハイマー病」との密接な関係に基づいて、基礎研究(5)を重ねてきた。臨床的にはホタテ由来プラズマローゲンをヒトに投与することでアルツハイマー病が改善することも実証(2-4)してきた。
これらのエビデンスに基づき、今回新たな発症仮説(右図)を提唱した。神経炎症とプラズマローゲンの減少は表裏の関係にあることから、これらの相互作用により、細胞膜異常及びシナプス異常を引き起こし、神経ネットワークの破綻へと至るルート[図のルート1.]とアミロイドβ、タウ蛋白の蓄積に至るルート[図のルート2.]の2つのルートにより神経ネットワークの破綻を引き起こし、アルツハイマー病、その他の精神神経疾患を発症するというものである。
脳は、精神的ストレス、感染症(かぜ等)、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症、老化といった危険因子*にさらされると神経炎症が起こり、その結果として、体内のプラズマローゲンが大量に消費される。一方で、プラズマローゲンが過剰に消費されるとその生合成に関わるペルオキシソーム及び小胞体が不全をきたし生成が追いつかず、プラズマローゲンの減少状態となる。その結果、神経炎症をもたらすという悪循環に陥る。これがアルツハイマー病に至る重要な原因と考えられる。



参考文献
1 Fujino T, Hossain S and Mawatari S. Therapeutic efficacy of plasmalogens for Alzheimer’s disease, Mild Cognitive Impairment and Parkinson’s disease in conjunction with a new hypothesis for the etiology of Alzheimer’s disease. In: Lizard G (ed). 2020. Peroxisome Biology: Experimental Models, Peroxisomal Disorders and Neurological Diseases. Switzerland: Springer International Publishing, pp.195-212.
2 Fujino T et al. 2018. Effects of Plasmalogen on Patients with Mild Cognitive Impairment: A Randomized, Placebo-Controlled Trial in Japan. J Alzheimers Dis Parkinsonism 8:419.
3 Fujino T et al. 2017. Efficacy and Blood Plasmalogen Changes by Oral Administration of Plasmalogen in Patients with Mild Alzheimer's Disease and Mild Cognitive Impairment: A Multicenter, Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Trial. EBioMedicine 17:199–205.
4 Fujino T et al. 2019. Effects of Plasmalogen on Patients with Moderate-to-Severe Alzheimer’s Disease and Blood Plasmalogen Changes: A Multi-Center, Open-Label Study. J Alzheimers Dis Parkinsonism 9:474.
5 Hossain S, Mawatari S and Fujino T. Biological Functions of Plasmalogens. In: Lizard G (ed). 2020. Peroxisome Biology: Experimental Models, Peroxisomal Disorders and Neurological Diseases. Switzerland: Springer International Publishing, pp. 171-193.
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