【人の縁の物語】<53>腕相撲で立ち直れ 福岡のNPO少年受け入れ「独りじゃない」

小野本道治さん(中央)の指導の下、腕相撲の練習に励むSFD21JAPANのメンバー 拡大

小野本道治さん(中央)の指導の下、腕相撲の練習に励むSFD21JAPANのメンバー

 夜な夜な、家庭や学校で居場所のない若者が、福岡市西区にある農家の納屋に集う。そこにはNPO法人「SFD21JAPAN」の“土俵”がある。腕相撲で力こぶを競い合い、昨年5月の九州アームレスリング選手権大会で7人が入賞、4人の全国大会出場者を出す実力派集団に成長した。努力することや仲間の大切さを学びながら。

 吐く息が白くなる真冬の夜。納屋2階を改装した20畳ほどの空間は、若武者十数人の熱気に満ちていた。

 「バリ、怖かったっすよ」。盗みの非行歴がある中学3年の少年(15)は笑う。1年前、友人に誘われて足を踏み入れた。最初は目つきの鋭い先輩たちにけおされたが、みんな優しかった。アームレスリングのこつを教えてくれるだけでなく、悩み相談にも乗ってくれた。

 「ここに来れば楽しいっす。体を鍛えたら疲れるのですぐに寝ます。生活のリズムもつきました」。昨年の九州大会では初戦敗退。今年は3位入賞が目標だ。

 主宰するのは、ボディービルを趣味とする小野本道治さん(47)。最初のきっかけは29歳の時、脱サラして妻の実家を手伝い始めたものの兼業農家で建築関係の仕事になじめず、うつ状態になったことだった。同じころに離婚して傷心だった中学の同級生と筋力トレーニングを始める。「体を鍛えれば元気になる」。軽い発想だった。

 納屋にダンベルやバーベルを持ち込んだ「ジム」で汗を流し始めた。直後、知人女性が「悪さばかりする。筋トレで鍛えてほしい」と息子を連れてきた。次第に不良と呼ばれる子どもたちが集まるようになった。

 細い眉、派手な服…。戸惑いを覚えつつも、駅伝選手を目指した高校で膝の故障に夢破れた自身の青春時代を思い出す。「目標を失い、ささくれる気持ちは分かる」。一緒にトレーニングすることにした。

 「勝負の決着が分かりやすく場所も取らない」。5年ほど前から腕相撲に取り組むようになった。当初はドラム缶の上で練習し、自分たちで育てた野菜を売って専用競技台を購入。本格的に技術を磨けるようになり、子どもたちはめきめきと力を付けていった。「教え子のパワーに押されっぱなし」。言葉とは裏腹に、笑顔がはじける。

 心(soul)、友達(friends)、夢(dreams)の頭文字を取って、2001年にSFDを設立した。社会人となったOBらも含めると会員は約70人に膨らみ、県警と連携した立ち直り支援イベントの講演、高齢者施設の慰問、街の落書き消しなど、活動の輪を広げている。

 成人男子75キロ以下級(左腕)で全国切符を手にした山本寛大さん(20)も、青年部長の肩書で講演会に引っ張りだこという。自身も高校で不登校だったが、SFDを通じて立ち直った。

 「後輩たちには独りじゃないってことに気づいてほしい。昔は、自分も独りぼっちと思っていたから。うまく言えないんで背中で伝えたいっす」。丸太のような腕を広げ、友情の輪をもっと大きくするつもりだ。


=2014/02/11付 西日本新聞朝刊=

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