農林漁業の行方考える 座談会<下>

山下惣一さん(左)の自宅そばの高台で。結城登美雄さん(中央)、佐藤清吾さんと=佐賀県唐津市 拡大

山下惣一さん(左)の自宅そばの高台で。結城登美雄さん(中央)、佐藤清吾さんと=佐賀県唐津市

 ●「資源浪費型」未来ない 山下 ●食糧の安全保障が必要 佐藤 ●消費者の理解大きな力 結城 
 佐賀県唐津市の農民作家、山下惣一さん(77)が、宮城県石巻市の漁師、佐藤清吾さん(72)、仙台市の地域づくりプロデューサー、結城登美雄さん(68)と語り合った座談会。今回は後半の議論を紹介する。「東日本大震災の後、農業や漁業を始める若者が出てきている」という結城さんの話を受けて…。
 (取材協力=生活クラブ生協。上は5日に掲載)

 山下 米国はオバマ大統領が家庭菜園に旗を振っている。ミシェル夫人がホワイトハウスの庭で野菜を作っている。米国は自給率は高いけれど輸出が多くて自分たちが食べるものは作っていないんだ。統計を見たら農家人口が増えている。増えているのは都市型のCSA(地域支援農業=消費者が地元の農家から代金前払いで一定量の農作物を直接買う)だそうです。有機栽培です。

 ロシアはダーチャ(都市住民が農作物を育てるため郊外に所有する自家菜園)だ。ロシア人の7割がやっています。

 結城 自分の食べるものは可能ならば自分で作る。市民農園や借りた農地で。作れなくても近くの顔が見える人から買う。日本にも、暮らしを見つめ直し始めている人はいる。

 山下 都市住民が考えなきゃだめだよ。従来の資源浪費型、環境破壊型の農業には未来はない。大規模農業がだめなのは投資、設備が巨大になるから。そうすると(1種類の作物を作る)単作じゃないと効率が悪い。路線変更できないから、経営が苦しくなっても、破綻するまで進むしかない。

 佐藤 うちの漁協でも、養殖の漁業種目が二つくらいだと病気で全滅したら収入がゼロになるので、ワカメや昆布、ホタテなどを5、6種目作るよう言っている。

 山下 昔、年老いた農民に(火鉢などに載せる3本足の)五徳(ごとく)農業と教えられた。三つくらいの作物を作れという意味だ。単作で大規模化を目指す日本の農政は間違っているよね。

 結城 佐藤さんのところの養殖ワカメなどでも、消費者と直接つながるCSAのような仕組みが広がればいいな、と思う。

 佐藤 宮城県が昨年始めた「水産業復興特区」で、民間企業が全国で初めて漁業権を持った。外国では企業が水産資源を取り尽くした例もあるそうです。企業が労働者を使って魚を取るのは戦前の仕組みなんですよ。

 山下 「蟹工船」の時代だ。農業も同じです。戦後の農地解放で地主を解体して農民に土地を分けたのに、今また土地を集めようとしているわけだ。

 佐藤 こうして日本の1次産業を滅ぼすような政策を続けて、将来、外国から「コメ1俵と日本の自動車交換しましょう」なんて言われたらどうすんの?
 食糧の安全保障は絶対必要なんですよ。

 山下 農民でよかったとつくづく思うな。農業をやる目的は「暮らし」だからですよ。金もうけじゃない。金の支配から逃れられない時代に、10%でも20%でも自給の部分ができるよね。それが農業のすごさだし、われわれの目指すところではないか。

 結城 消費者が農林漁業の現場を理解してくれることが、大きな力になると思いたい。「おまえさんの作った、取ったものを俺たちは食べたいんだ」というつながりが必要だ。

=2014/02/12付 西日本新聞朝刊=

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