【こんにちは!あかちゃん 第14部】「明日の親」を育む<1>授業でだっこ 命ずしり

「赤ちゃん先生」と胎児だったころの超音波写真を見比べるKTC中央高等学院の生徒 拡大

「赤ちゃん先生」と胎児だったころの超音波写真を見比べるKTC中央高等学院の生徒

 落とさないように、強く締め付けないように、両腕で包み込んだ。赤ちゃんに触れるのは、いとこの子どもに会って以来だから、6年ぶりだという。

 福岡市にある通信制高校サポート校、KTC中央高等学院。2年男子の今村光希さん(16)は、4人の赤ちゃんを「先生」に迎えた触れ合い授業に臨んでいた。「すごく温かくて、同じ大きさの物よりずっしり重い感じ。自分の子はもっとかわいいのかな」。そう言いつつも、腕の中の赤ちゃんが泣きだすと、慌てて隣に押しつけた。

 《授業は神戸市の「ママの働き方応援隊」が考案した。赤ちゃんと母親を学校などへ派遣するプロジェクトを展開するNPO法人。昨年からは北九州市を拠点に九州各地でも活動している。親となる喜びや責任を感じてもらうのが狙いだ》

 今村さんが抱いていた赤ちゃんをあやしながら、その母親の梅田誉子(たかこ)さん(36)は生徒の前で出産を振り返った。「急な陣痛で救急車を待てず、自宅のソファで出てきちゃって。へその緒がつながったまま病院に運び込まれました」。別の母親も帝王切開や陣痛で一晩中苦しんだ経験を語った。生徒たちは痛みを想像し、顔をゆがませる。

 牛方一太(くにひろ)さん(17)は話の途中で抜け出した。小学生のころにおんぶした赤ちゃんを落として以来、どう接していいか分からなかったからだ。それでも目が合うとうれしくなって、お菓子をあげることはできた。

 授業は50分間で終了した。見送りの拍手は、最初に赤ちゃんたちを迎えたときより大きく響いた。「生まれ方って人それぞれなんだ」「ここまで育ててくれた親に感謝したい」。生徒たちはそんな感想文をつづった。

 《2012年の出生数は過去最低の約103万7千人で、1970年代初めの第2次ベビーブームから半減した。合計特殊出生率(1人が生涯に産む子どもの推定人数)は1・41。一人っ子が増える中で「赤ちゃん先生」は貴重な教材となっている》

 門司海青小学校(北九州市)の2年生53人は、昨年7月から5回にわたって5人の赤ちゃんと交流した。約10人の班ごとに毎回、同じ子を担当する。オロオロするばかりだった子どもたちは、半年の時間をかけて「親目線」に変わっていった。

 今年1月の最終回。赤ちゃんに贈った手紙には、多くの児童が「優しい人になってね」と書き込んだ。担任の吉竹敦さん(34)は「人間として何が一番大切かを考えて『優しさ』を挙げてくれた。教科書では伝えきれないことが心に響いたんですね」と手応えを感じた。

 子育て文化を伝えることは、自分や相手を大切にするという人としての基盤づくりそのものなのかもれしれない。門司海青小でも講師役を務めてきた梅田さんは「低学年は自分で手いっぱいなのに、人を思いやる心が芽生えるなんて」と、成長ぶりに感動して目を潤ませていた。

 少子化や核家族化が進む中で育つ子どもたちは、子育てのモデルが身近になく、親となる未来を描きづらい環境に置かれている。一方で、性についての無責任な情報にさらされ、翻弄(ほんろう)されている。「明日の親」となる子どもたちに、命を育むことをどう伝えていけばいいのか。心と体の成長を見守る現場で探った。


=2014/02/18付 西日本新聞朝刊=

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