【こんにちは!あかちゃん 第14部】「明日の親」を育む<2>迷える男子に性教育

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講演する池田稔さん

池田クリニックが作製したポスター

 教員を定年まで勤めたという男性は、背中を丸めて診察室の椅子に座った。「ずっと悩んできた。手術してください」

 熊本県合志市の泌尿器科医院「池田クリニック」。院長の池田稔さん(56)が調べると、手術など必要のない仮性包茎だった。問題はむしろ、教員さえも正しい知識を持っていない現状ではないか。

 《性機能が成熟に向かう思春期。女子の月経などに比べて「男子の体」は学校や家庭でも深く教えられない。性器の形、自慰行為の方法や回数に人知れず悩む男子は多く、発達の遅れが見逃されたり、不適切な自慰習慣から遅漏(ちろう)などの射精障害となったりしている》

 「男子は自然に学ぶもの-として必要な情報が与えられていない」。性教育に関する講演もしている池田さんの実感だ。そこで講師を務める際は、男子についても詳しく解説するよう心掛けているという。

 今月は熊本市の日吉中学校で3年生の男女約150人を前に話した。スクリーンに映し出したのは、包茎治療の雑誌広告。「性病にかからないよう手術しました」「においのせいで彼女とうまくいかなくて」。体験者の声がまことしやかに躍る。

 「包茎手術をしてもコンドームを使わなければ性感染症にかかる。においは洗い方の問題で、心配ありません」。一つ一つ医学的に正していく。治療が必要な真性包茎とそうでない仮性包茎があること、誤った情報に惑わされて不要な手術に高額を費やす人が多いことも紹介した。

 次にポスターを取り出した。「お~い男子諸君! たまには玉の大きさ気にしろよ!」。そのタイトルに笑い声が漏れる。「ペニスのサイズを気にする人が多いけれど、重要なのは男性ホルモンを作る睾丸(こうがん)の大きさです」。池田さんは指先でOKマークをつくり「高校1年の終わりに、この輪っかくらいになっていれば大丈夫」。うつむく生徒にも声は届いているはずだ。

 いつか男の子を育てるかもしれない女子も知っておくべき情報なのに、ふたがされてきた。田中繁蔵校長は「自分たち体のことも知らないなんて、おかしいですね」と自戒を込める。

 福岡市で子どもの電話相談に応じるNPO法人「チャイルドライン・もしもしキモチ」も男子に対する性教育の必要性を痛感している。相談の3~4割が男子からの性に関する電話だからだ。対応を模索しようと、2年前から医療や学校関係者と勉強会を開いている。

 代表理事の山田真理子さん(62)は「女子が産婦人科なら、男子は? ほとんどの中高生は泌尿器科ということすら知らない。悩みの解決をインターネットに求め、アダルトサイトなどで『ゆがんだ性』を身に付けてしまうのです」と指摘する。

 《ネットに広がるのは、刺激を追求し「男らしさ」を誇張した性。そのまま現実世界に持ち込めば、恋人間のドメスティックバイオレンス(デートDV)や性犯罪に結びつくこともある。内面に向かうと「自分はあんなふうにできない」「異常な人間かもしれない」と自己否定し、人格にまで影響する》

 勉強会では、これらの課題に向き合う泌尿器科医や産婦人科医、助産師、養護教諭、カウンセラーらの連携を目指している。勉強会に招かれた池田さんは「一番伝えたいのは『性は多様であり、人それぞれ』ということ。他人に強要されるものでなく、自分自身で決定するものです。互いの心と体を大切にする判断ができるようになってほしい」と話した。


=2014/02/19付 西日本新聞朝刊=

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