【こんにちは!あかちゃん 第14部】「明日の親」を育む<3>望まぬ妊娠 寂しさも…

 自分の知らないうちに子どもが妊娠、中絶する-。そんな想像をする親はいないだろう。だが、福岡県内で産婦人科医院を営む男性医師は断言する。「実際にある」と。

 住宅街に小さな看板を掲げたこの医院には、県内外から女性が駆け込む。中絶手術を受ける患者の2割弱は高校生、中学生も1割余り。多くは母親に付き添われてくるが、交際相手の親には「将来」を考えて知らせない子、さらには自分の親にすら黙って友達と一緒に来る子もいる。費用は約10万円で、アルバイト代や友達から借りて捻出するという。

 取材中も診察室の電話が鳴った。「彼女の親には? 言ってないのね」。医師は淡々と応じて受話器を置いた。「これでも10年前に比べれば減った。少子化や性教育の効果、避妊薬の普及もあるのでしょう」

 《厚生労働省によると、未成年の中絶件数は2001年度の約4万6千件から徐々に減り、12年度は2万659件だった。ただ、九州各県の中絶実施率(人口千人あたり)をみると、福岡が11・3件で全国トップ、次いで熊本の10・1件。全国平均の7・0件を下回ったのは宮崎のみだった》

 なぜ、望まない妊娠をしてしまう中高生が絶えないのか。
 「性の問題を抱える生徒は、育児放棄や過干渉など、保護者の愛情をしっかり受けていない共通点がある」。九州南部にある中学校の養護教諭(40)は、そう分析する。

 かつて、こんな子がいた。不特定多数の異性と交際を繰り返していた3年生の女子生徒。素直で穏やかな性格で、両親と兄の4人で暮らしていた。ただ、夕食はいつもそれぞれの部屋で総菜を食べていたという。「寂しさを異性で紛らわせているようでした」。他人との距離の取り方が分からず、ぬくもりを求めて性的関係に頼ったり、固執してストーカー化したりする生徒もいた。

 福岡市内の中学校に勤める養護教諭(49)は、30年近い教員生活で生徒3人の中絶に直面した。背景にはやはり「寂しさ」を感じている。さらにその心の隙間にインターネットが滑り込み、問題を複雑化させる。

 現実の生活範囲を超え、見ず知らずの大人とも出会えるネットの世界。「性の敷居が下がった。妊娠する可能性があると分かりながら、求められるまま危ない綱渡りをしてしまう」。子どもたちは、性を赤裸々に描く「携帯小説」やドラマの影響も受け、セックスが恋愛のゴールと思い込む傾向にあるという。

 「望まない妊娠は、性教育などの知識では止められないのではないか」。養護教諭たちの模索は続く。


=2014/02/20付 西日本新聞朝刊=

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