【こんにちは!あかちゃん 第14部】「明日の親」を育む<4>リスク避けて「草食化」

 《「草食男子」が流行語となったのは2009年。恋愛やセックスに消極的な若者が増え、積極的な層との二極化が男女問わず進んでいる。「草食化」は非婚、少子化を加速させると警戒する専門家もいる》

 実際に福岡市・天神で「草食男子」を探してみると、すぐに見つかった。市内の大学に通う1年生のAさん(19)。「彼女いない歴19年」という。

 高校時代に好きな子はいたものの、何も伝えられないまま卒業した。理由は「友達関係が壊れるのが怖くて」。でも女友達は多い方で、バレンタインデーに義理チョコを20個もらったこともあるそうだ。

 フットサルのサークルやアルバイト先で出会いはある。将来は結婚もしたい。「生活の安定というか、早く落ち着きたいから。20歳までに彼女ができたらいいな」。なのに自ら踏み出そうとしないのは、なぜ? 「積極性の問題なんでしょうね」

 専門家にも聞いてみた。山口大教授の高橋征仁さん(社会心理学)は背景に「社会構造の変質」を見る。モテるかモテないか、恋愛市場における位置付けを嗅ぎ取り、失恋などのリスクを先読みして諦める若者たち。本来は友人とのコミュニケーションが性的関心を育てるが、それも希薄化しているという。

 裏付けるデータがある。日本性教育協会が6年ごとに実施している「青少年の性行動全国調査」。中学生から大学生が対象で、1970年代の開始時から性行動の低年齢化が進んで問題にもなったが、直近の2011年調査で大きな転機を迎えた。

 キスや性交の経験率がほぼ全ての年代で一斉に下落し、1990年代の水準に戻ったのだ。一方で性に対するイメージでは「楽しくない」「汚い」という否定的な回答が増加傾向で、未経験のうちから性的関心や欲望が抑えられていることがうかがえた。

 さらに、性行動と自己評価には関連性があり、自己を肯定できないと相手から拒否されるリスクを意識するため、積極的になれないという。調査結果の分析も担当した高橋さんは、恋愛や性の「リスク化」と呼ぶ。

 《「KY(空気が読めない)」が流行語となったのは2007年。急激に広がるネット社会の陰で、生身の触れ合いが遠ざかる。追いかけるように草食化が進む》

 そんな中、大学生自らが性の知識やコミュニケーション力を伝えようという動きがある。熊本大の看護学専攻生が中心となったサークル「くまぴあ」は、仲間(ぴあ)として高校生や大学生と一緒に考える「ピアカウンセリング」を実践している。

 ある高校で試みたのは「恋人に一番してほしくないこと」を考えるプログラム。(1)うそをつく(2)暴力を振るう(3)浮気をする(4)約束を守らない(5)相手の気持ちを考えない-の選択肢から、班ごとに一つに絞ってもらう。

 答えを出すのが目的ではないのに、すぐに「それでいいよ」とまとまる班もある。「場の空気を読んで意見をのみ込む子が多い」と、くまぴあ代表の山下優花さん(22)。「どうしてそう思う?」と議論を促すと「言葉の暴力も嫌だ」「暴力も『相手の気持ちを考えない』に入るでしょ」とさまざまな声が飛び交った。結論を導き出す過程で、人によって優先順位が異なり、同じ言葉でも捉え方に差があることが見えてきたようだ。

 まずは人と人としての関係を築くこと。そのためには考えを伝え合い、すり合わせることが欠かせない。「豊かなコミュニケーションあってこその性だと思います」。山下さんたちの思いは生徒に届いたはずだ。


=2014/02/21付 西日本新聞朝刊=

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