育て 野焼きボランティア 阿蘇で研修会 安全確保に最重点 担い手不足 貴重な戦力

かずらと青竹で作った「火消し棒」で残り火を消す練習をする「野焼き支援ボランティア初心者研修会」の参加者 拡大

かずらと青竹で作った「火消し棒」で残り火を消す練習をする「野焼き支援ボランティア初心者研修会」の参加者

 熊本・阿蘇の「野焼き」は春の風物詩だ。草原が森林になるのを防いで景観や希少な動植物を守る。地元畜産農家らでつくる約160の牧野(ぼくや)組合が草原を守ってきたが、高齢化や後継者不足で担い手が減少。ボランティアが貴重な戦力になっている。公益財団法人「阿蘇グリーンストック(GS)」が2月に熊本県阿蘇市で開催した野焼き支援ボランティアの初心者研修会を受講した。

 「つい火に見とれてしまいますが、注意を怠らないで。勝手な行動をしないで地元の方やボランティアリーダーの指示に従ってください」。柔らかい面持ちとは裏腹にGSの桐原章専務代理の語気は鋭かった。

 枯れ草を焼く野焼きでは風を受けて一気に燃え広がる。このため、草を刈って山火事防止の防火帯(幅7~15メートル)を作る(輪地(わち)切り)。ボランティアの役割は残り火や防火帯を越えた飛び火を火消し棒でたたいて消したり、輪地切りを手伝ったりすることだ。

 桐原さんの言葉が鋭いのには訳がある。2年前、阿蘇市で野焼き支援ボランティアの男性=当時(70)=が防火帯を越えた火に巻き込まれて死亡したのだ。

 「火をつけると風向きが急変することがある」「防火帯の内側の原野に入らない」。必死でメモする。万一、火に囲まれた際の対応も。「ぬらしたタオルで顔を覆い地面に伏せる」「ライターで風下の草を焼き、そこに逃げ込む」。背筋が伸びた。

 続いてボランティアリーダーの江口正義さん(74)=佐賀県みやき町=の指導で火消し棒を作った。長さ約3メートルの青竹の先端に切れ目が入っており、かずらを編み込んで網状に。野焼きで実際に使うそうだ。「火消し棒は肩より上に振り上げないで。火の粉が後ろに飛びます。もみ消すように」。江口さんに使い方を習った。

 夜は交流会。長崎県諫早市の池田健治さん(68)は「東日本大震災の後、ボランティアをしたいと考えていた。草刈りは得意。手入れした草原を孫に見せたい」と発表。熊本県の20代の男性は「高齢化で草原の維持が大変と聞いて役に立ちたかった」と話した。参加者は、それぞれの志を胸に秘めていた。

 2日目。阿蘇市の「下荻の草牧野組合」の丸野雄司さん(58)が講演。55ヘクタールの草原を6人の組合員で管理している。うち2人は高齢で野焼きに参加できなくなったという。「草原には原野火災を防ぐ防波堤の役割もある。ボランティアさんのおかげで草原が維持できている」。丸野さんは感謝の言葉を述べた。

 研修会が終わり、受講証明書やヘルメットを支給され、ゴーグルや手袋を買った。これでいつでも野焼きと輪地切りに参加できる。

 研修会では危険と隣り合わせだとたたき込まれたが、それ以上に草原を守ろうと集まった人々の「志」に打たれた。微力だが貢献したいと心に誓った。

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【ワードBOX】野焼き支援ボランティア

 阿蘇の野焼きでは、1998年度からボランティアが野焼きと輪地切りに協力している。参加者は98年度が延べ110人。2012年度は延べ2300人に増えた。「野焼き支援ボランティア初心者研修会」を受ければ野焼きと輪地切りに参加できる。約770人が会員登録する。現在ボランティアは、56の牧野(畜産農家らが管理する草原)計5800ヘクタールで野焼きを支援。計175キロの長さに及ぶ輪地切りを手伝う。


=2014/02/26付 西日本新聞朝刊=

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