【おひとり介護】<1>私しか…不安ずしり

「最期まで家族で支えたい」。入院中の伯母のマンションで伯母の帰宅を待つ女性 拡大

「最期まで家族で支えたい」。入院中の伯母のマンションで伯母の帰宅を待つ女性

 5畳の古びたワンルームに1人。真夜中に決まって目が覚める。「シングルだとこんなに損するのか。私の将来はどうなるのか」。川崎市の会社員荒井久美子さん(54)は今、不安と悩みとみじめさに押しつぶされそうになっている。

 2011年10月、父(87)と母(79)が同時に認知症と診断された。離婚して子どもがいない荒井さんは、実家で同居することにした。結婚して子ども2人がいる妹は「私には家庭がある」と及び腰だった。荒井さんは両親の様子を見るため、自らの病気を理由に休職した。

 3カ月で復職するつもりが、年末には母が要介護4、父が要介護3に認定された。間もなく母が高血圧で倒れて入院。ソーシャルワーカーの勧めで、特別養護老人ホームに入所し、父と2人きりになった。

 父はデイサービスを拒否し、他人が家に入るのを嫌がって閉じこもった。認知症の周辺症状なのか、よく激高した。

 「あんたの味付けは悪い」「なかなか結婚しなかった上にすぐ離婚して」「長女だからやって当たり前」…。身の回りの世話をする荒井さんに暴言を吐いた。半面、数カ月に1度顔を出す妹には「家庭があるのにありがとう」と笑顔を見せた。

 12年10月。突然、父がノートパソコンを見ていた荒井さんからパソコンを奪い、投げつけた。危険を感じた荒井さんが自室に逃げ込むと「殺してやる」とドアをたたき続けた。やむなく「認知症の父が暴れています。助けてください」と110番通報した。

 この“事件”を機に行政などが介入し、荒井さんは実家を出て近所のワンルームマンションに移った。休職中で収入がないため、月6万円の家賃は父の年金を頼り、貯金は生活費で目減りしていく。実家には週3回、ヘルパーが入るようになったものの、掃除や買い物などは荒井さんの肩に掛かっている。

 大学卒業から30年間、旅行会社に勤め、残業や休日出勤もいとわず、管理職に昇進もした。だが、休職中に会社は業績不振で吸収合併され、今は知った顔もいない。復職を申し出ると「残業も休日出勤も可能か」と念を押される。介護への責任感もあって踏み切れない。

 今年7月末で休職期間が切れる。介護休業はとても言い出せない。「50代での再就職は厳しい。リタイアするには早いし、まだ年金ももらえない」。眠れない日に終わりは見えない。

 福岡県大牟田市の女性(48)は20代半ばで歯科衛生士を辞めてから、仕事に就けないままでいる。結婚はしていない。ひとり親家庭の一人っ子。脳卒中で倒れた祖母と糖尿病の母を世話してきた。9年前に母をみとると、今度は独身の伯母(86)の介護が始まった。

 認知症の伯母は要介護5。かんしゃくや被害妄想が激しく、振り回されたこともしばしば。小規模多機能施設の支援を受けながら、伯母が1人で暮らす福岡市のマンションと大牟田市を行き来しながら支えてきた。

 伯母は年明けに骨折して入院中。女性は退院後も自宅に帰し、最期まで寄り添うつもりでいる。自身の将来の不安はあるが、考えてはいられない。「私しか支える人がいないのだから」

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 高齢化の一方、少子化が進み、生涯未婚率も上昇している。これに伴い、1人で親を世話する「おひとり介護」が増えている。相談相手やストレスのはけ口がなく、虐待などにもつながりやすいとされる。おひとり介護の実態を探り、必要な支援を考える。


=2014/02/27付 西日本新聞朝刊=

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