「運動の実態、見抜けなかった」裏切られた草の根活動の大義

中日新聞連載「翻弄 リコール不正の陰で」㊦

 新型コロナウイルスの一日の新規感染者数が、初めて1000人の大台を突破した直後の昨年8月初旬。「『ノー』と言わなければ、認めたことになってしまうんです」。マスク姿の通行人が行き交う名古屋駅前。髪を後ろで束ね、スニーカーを履いた小柄な主婦がマイクを握っていた。

 「86万、87万、できたら100万票の署名があれば、日本で初めての(知事の)リコール、成功です」。3週間後に迫る署名集めのスタート。普段より人通りはまばらだが、運動の意義を分かってもらいたくて、声に熱がこもった。

 愛知県で暮らすこの女性にとって、街頭演説はもちろん、政治活動に関わるのも初めてだった。きっかけは、2019年の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の企画展「表現の不自由展・その後」。昭和天皇や日本兵に関する作品群を知り、「非常識」と納得がいかなかった。

 軍医の家庭に育った女性の母は戦時中、中国で生まれた。初めて日本の地を踏んだのは小学生のころ。親に手を引かれ、きょうだいとともに、命からがら引き揚げ船に乗った。「あり得ない。なんで、こんなことを」。展示会の直後に他界した母は亡くなる少し前、作品に対してこぼした。

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