派遣は買われた不正の駒か 時給950円「めったにない好条件」一転 

中日新聞連載「翻弄 リコール不正の陰で」㊤

 半年ほど前の昨年10月末。人材派遣会社に登録する40代の男性は、自宅から50キロ離れた佐賀市内の施設にいた。整然と並ぶ長机には、愛知県知事のリコール(解職請求)を求める署名用紙と名簿の束が積み上げられていた。

 「目標に足りていません。書き方が遅いです」。女性スタッフの命令口調を不快に思いつつ、男性はボールペンを走らせた。豊田市、豊川市、みよし市…。なじみの薄い愛知県で暮らす他人の名前を用紙に書き写していく。名簿には重複する人物もあった。「同じ名前の人がこんなにいるのかな」。何かおかしいと感じつつ、「良いことをしている。代筆の許可を取っている」という説明を疑わなかった。もともと、他県のリコール運動に関心はなかった。

 男性は普段、個人事業主として企業に営業戦略を助言する業務をしている。九州を中心に各地を飛び回っていたが、新型コロナウイルスの影響で顧客との商談が制限され、大手の派遣会社に登録した。

 自分と同じアルバイトは多い日で、100人近くもいた。新型コロナの経済への影響は、派遣やパートなど不安定な立場の人たちを直撃。非正規労働者の雇用は当時、8カ月連続で減少が続いていた。

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