「片耳難聴」まず知って 声の方向分かりづらい、「無視した」誤解も

 「片耳難聴について、広く知ってもらいたい」。京都新聞の双方向報道「読者に応える」に、近年発足した当事者団体「きこいろ」からメッセージが届いた。片方の耳が聞こえづらい、もしくは全く聞こえない片耳難聴者。日常生活に大きな支障はないが、声のする方向が分かりにくいなどの不便がある。中には、声をかけられているのに気付かず「無視をした」と誤解されるケースもあるそうだ。

 「騒々しい中で話を聞き取るのは苦手です」。そう話すのは、京都市の京都光華女子大医療福祉学科で、聴覚障害を研究する高井小織准教授。5歳の就学前診断で、左耳が全く聞こえないと診断された。

 片耳難聴は一側性難聴とも呼ばれる。原因は不明なことも多い。先天的な理由やおたふくかぜの合併症、大人になってからの突発性などさまざま。治療も難しいことがほとんどだ。

 国による片耳難聴者数の統計はない。当事者団体では、新生児聴覚スクリーニングで約千人に1人の割合で発見されること、後天的な原因も含め国内で30万人以上いると推計している。

 片耳難聴者は日常生活に大きな支障はないことが多い。聞き取れる音の大きさは、両耳が聞こえる人と片耳しか聞こえない人との間で、差がほとんどないためだ。障害者手帳の交付対象にはなっていない。しかし、個人差もあるが、聞こえない耳の側から話しかけられると気付かない▽音や声が出ている方向が分かりづらい-などの不便がある。

 高井准教授も小中学生時、話しかけられた友達に気付かずに「無視をした」と誤解された経験がある。今でも宴会で会話を聞き取るのは苦手だ。また、緊張するのは運転中に助手席に人がいる場面。耳が聞こえない左側で会話をされるためだ。大学の初回講義では学生に左耳が聞こえないことを伝える。その上で、学生には正面で話したり、手を振って発言したりするよう求めている。

 近年では、2018年のNHK連続テレビ小説「半分、青い。」に片耳難聴のヒロインが登場し、認知度は高まりつつある。しかし、高井准教授は「『片耳が聞こえているから大丈夫』と勘違いされることも多い。正しい知識が広まっているとは言えない」と話す。

      ◇◇◇◇◇

 そんな中、全国の専門家や当事者らが19年8月に立ち上げたのが「きこいろ」。これまでに片耳難聴者への行政支援や当事者団体はほぼなく、当事者が情報を得る機会は限られていた。

 きこいろには現在、当事者やその家族など約390人の会員がいる。高井准教授は副代表。片耳難聴者を対象にした交流会や、保護者向けのレクチャーなどを全国の会場やオンラインで毎月開催してきた。

 ホームページでは、片耳難聴の原因や周囲の人ができる工夫も紹介している。家庭や職場向けの工夫では、聞こえる耳の方から話しかける▽にぎやかな場所では近くではっきり話す▽声かけに気付かない時は肩をたたく-などとイラストも交えながら解説する。

 片耳難聴者自身は聞こえづらい場面では、聞こえやすい位置に移動する、聞こえる方の耳を相手に向けるなどして対応する。しかし、自身の力では解決できない場面もある。高井准教授は「当事者自身が片耳難聴に関する正確な知識を持った上で、周囲にどう配慮してほしいかを適切に伝えることも大切」と語る。

 一方で、周囲による片耳難聴者への工夫や配慮も欠かせない。高井准教授は「自分の状態を伝えて改善されないのであれば、片耳難聴であることを伝えづらくなってしまう」と話す。その上で、「家庭や職場で、片耳難聴者が『ここで自分の状態を話しても大丈夫』と思ってもらえるような関係性を互いに築いてほしい」と話す。 (京都新聞)

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