【ESDって?】<上>「地球の視点」で授業

干潟の生態系をテーマに、曽根東小であったモデル授業。児童に配られたカードには、生き物に加え、人間も含まれていて、人間をどこに位置づけるか、みんな悩んでいた 拡大

干潟の生態系をテーマに、曽根東小であったモデル授業。児童に配られたカードには、生き物に加え、人間も含まれていて、人間をどこに位置づけるか、みんな悩んでいた

 「ESD」を知っていますか? 「持続可能な開発(発展)のための教育」などと訳される。運命共同体である地球の視点から、環境学習や国際理解などを深める次世代教育。どんなテーマで、どんな授業に取り組めばいいのか。九州・沖縄各県の8団体が学校と連携し、昨年9月から新たな授業案づくりに取り組んでいる。その模索ぶりを2回に分けてリポートする。 (佐藤倫之)

 北九州市で環境保全活動に取り組む市民団体「青い地球の会ブルーアース」は、曽根干潟近くにある曽根東小学校(同市小倉南区)で1月、4年生を対象にモデル授業を2度実践した。

 初回のテーマは「干潟の生態系を知ろう」。同校は20年ほど前から、全児童で干潟の清掃作業に取り組み、低学年から生き物観察、干潟につながるクリーク、川、山との連環まで段階的に学んでいる。いわば環境学習の先進校。ブルーアースには一歩踏み込んだ授業提案が求められた。

 講師を務めたメンバーは、児童たちに捕食と被食、共生などの事例を示した後、干潟で生息する野鳥やカブトガニ、魚などのカードを配り、「どんな関係にあるか、シートに貼ってみてください」と問い掛けた。

 ポイントは、カードの中に「人間」が含まれていることだ。児童の多くが、捕食などの視点から人間や鳥を高位置に並べた。しかし、生物多様性の中で人間をどこに位置づけるべきか、「正答」はない。余韻を残して授業は終わった。

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 干潟の清掃活動を続けながら、どんな生き物を見つけましたか? 2度目の授業では、こんな宿題があらかじめ出されていた。「みんな、目をつむって生き物になってみよう」。合図で目を開けると、教室にはペットボトル、空き缶などのごみが広げられていた。

 「気持ち悪い」「嫌だ」。ブーイングが上がる中、メンバーが問う。「もし、あなたが生き物だったら、人間にどうしてもらいたい?」。干潟の環境問題を、人間の上から目線ではなく、生き物の視点から捉え直す狙いがあった。

 児童からは「ごみを捨てないでほしい」。「世界の人々に訴えたい」という声も。メンバーは、海が7割を占める地球儀を示しながら、「そう、この干潟は世界の海につながっている。その海を、あなたたちの活動が守ってくれているんだよ」と語り掛けた。

 生き物の視点に立ち、視界を地球に広げる。その学びは「think globally act locally」(地球規模で考え、身近な所から行動する)というESDの理念とも重なっていた。

 ブルーアースの後藤加奈子代表(50)は「これまでの環境学習は、かけがえのない自然を守ろう(保全)が中心だった。それも大切なのだが、私たちはもう一歩踏み込み、『では、あなたは何をしますか』と、子どもたちに問い掛けたかった」。それは、メンバーである大人たちにも向けられた「問い」でもあった。

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 【ワードBOX】ESD

 Education for Sustainable Developmentの略。地球規模での持続可能な社会づくりに向け、環境破壊、経済格差、平和、貧困、食料危機、人権などの視点から、判断力や問題解決力を養い、国際連携などのあり方を考える教育。サスティナビリティー(持続可能性)という言葉は1980年代から注目され始め、92年の国連環境開発会議(地球サミット)で国際的な行動計画(アジェンダ21)が採択。日本政府と国内NGOが2002年、世界首脳会議ヨハネスブルグサミットで10年実施計画(05~14年)を提唱した。


=2014/03/18付 西日本新聞朝刊=

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