病児保育 広がるが… 施設型、厳しい運営 訪問型も登場

ベビートットセンターの保育室。感染症対策として3部屋が独立しており、小児科併設型のため病状の急変にも対応できる 拡大

ベビートットセンターの保育室。感染症対策として3部屋が独立しており、小児科併設型のため病状の急変にも対応できる

 ■新訳男女 語り合おう■ 
 病気の子どもを一時的に預かる「病児保育」は、働く親たちにとって頼りになる存在だ。全国的に施設数は年々増加しているが、多くの施設が赤字運営という厳しい状況で、整備が遅れている地域も少なくない。ニーズが高まる中、自宅へ保育者が派遣される「訪問型」も九州で広がり始めた。

 室内が見渡せるよう広く窓を取った3部屋で、1~6歳の子ども7人が遊んでいた。風邪にインフルエンザ、溶連菌感染症…。元気そうに見えても保育所には通えない。

 福岡市中央区大名に3年前に開設された病児保育施設「ベビートットセンター」。市の委託を受けて大名よねくら小児科クリニックが運営しており、院長の米倉順孝さん(39)は「働く人が多い地域。職場に近ければ、お迎えの時間を気にしないで済む」と話す。

 保育士2人と看護師1人が常駐し、預かる子どもの数が多い日はパート保育士も加わる。利用は平日午前8時半~午後5時半で、料金は原則1日2千円。国と市の補助を受けても「収支はトントン」。最初に施設の整備費がかかった分、赤字になっているという。

 季節によって利用者数の変動が激しく、連日キャンセル待ちのときもあれば、利用者ゼロの日もあるのが大きな要因だ。

 厚生労働省によると、国の補助対象の病児・病後児保育施設は2012年度で1102カ所。08年度に比べて約32%増えてはいるものの、施設のない地域があるなど整備が追いついていない。

 昨年7月に厚労省研究班が行った実態調査(738施設が回答)では、1施設当たりの稼働率は30・5%で、運営収支の中央値は73・4万円の赤字だった。4割以上の施設が当日キャンセル、利用児童数の日々の変動を課題に挙げている。

 国の「子ども・子育てビジョン」では、14年度までに年間延べ利用者数200万人を目標に設定(現在約50万人)。15年度にスタートする「子ども・子育て支援新制度」でも病児保育を施策の柱とし、支援の拡充を進めていくという。

 関東や関西の都市圏では定着している訪問型の病児保育。福岡、佐賀の一部地域でも株式会社「スタンドバイ」(福岡県筑紫野市)が昨夏から、このサービスを始めた。代表の杉原伸介さん(45)は、三つの保育所を経営する中で働く親たちの切実な声を聞き、事業を立ち上げたという。

 「子どもを思う気持ちと職場への気遣いとで板挟みになり、苦しむ人が多かった。仕事との両立を諦めて保育所を去る人もいて何とかしたかった」。会員制で当日朝8時までに依頼すれば、保育者を100%自宅へ派遣できるのが特徴だ。

 入会金1万5千円、月会費3500円で、利用料金は1時間900円。急に熱を出したときの保育所へのお迎えや、医療機関の受診も代行する。スタッフは保育士や介護経験者で、小児医療講習や保育所での実習を受けている。

 佐賀県のパート女性(37)は1月に2回利用した。3歳の息子は気管支が弱く、熱も出しやすい。職場の前任者は休みが多いのを理由に辞めさせられた。自宅近くには病児保育施設がなく、車で1時間の実家は自営業のため預けにくい。

 「本当にありがたい。いつでも頼める、保険のようなものだと思っています」と女性。現在、法人契約の営業に力を入れる杉原さんは「女性にとっても会社にとっても、子育てはリスクじゃなくプラスになるというふうに社会全体を変えていきたい」と力を込める。


=2014/03/22付 西日本新聞朝刊=

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