【おひとり介護】<4>「支援必要」と認識を

「おひとり介護」の実態と必要な支援を議論する研究者たち 拡大

「おひとり介護」の実態と必要な支援を議論する研究者たち

 全国的に「おひとり介護」が増え、最も割合の多い息子が母親を在宅介護するケースでは、1人で悩みを抱え込んでしまいがち-。

 九州看護福祉大(熊本県玉名市)や産業医科大(北九州市)などの研究チームが、全国の地域包括支援センターと訪問看護ステーション計241カ所に調査した結果、こんな「おひとり介護」の実態が浮かび上がった。

 研究チームは2011年12月~12年2月、両施設に所属する看護職220人に、40~64歳の中高年の単身介護者に関するアンケートに答えてもらった。

 中高年単身者による介護は1534件あり、男女比はほぼ半々。うち、1300件が高齢者と単身者の2人暮らしで、母親と息子(35・5%)が最多だった。介護している子どもは、介護を「自分しかいない」「子としての責任」と受け止め、自身の将来展望に「悩んでいることが分かる」傾向が見られた。

 また、息子と娘では必要な支援に差があることも分かった。男性は(1)家事能力(2)仕事との両立(3)介護技術、女性は(1)高齢者との関係(2)仕事との両立(3)他の家族との関係-の順で苦慮。息子については「介護者同士のネットワークができにくい」「介護を一人で背負う傾向がある」「近所の人に気軽に頼めない」などとみている人が多かった。

 研究チームは協力が得られた茨城県大洗町、静岡県伊東市など5地域で聞き取り調査も実施した。母と息子の2人暮らしで、母が入浴や衣類の洗濯などもされないまま介護放棄する「ネグレクト状態」にあるなど、支援困難ケースも多数報告された。

 東日本大震災で被災した茨城県大洗町では、高齢者がいる全世帯の訪問調査をした結果、独居や夫婦だけの高齢者世帯に限らず、子どもとの2人暮らし世帯でも支援の必要性が浮き彫りになったという。

 研究チーム代表で、九州看護福祉大教授の生野繁子さん(57)は「『わが子と同居しているから大丈夫』と見過ごさず、支援すべき対象と認識して。特に、看護・介護の専門職は、とにかく言葉を交わすなど要介護者とセットで支え、孤立させないでほしい」と訴える。

 こうした調査結果を踏まえ、研究チームは「シングル介護プロジェクト」を始動した。昨年5月には熊本県玉名市で「ひとりで悩まない介護セミナー」を開催。簡単な介護食の調理体験と試食カフェ、介護便利グッズ紹介、法律相談コーナーなどを設け、好評だった。

 生野さんは「仕事も忙しい中高年単身者には、1カ所で必要な情報すべてが手に入り、気軽に立ち寄れる『ワンストップ型カフェ』が有効」とみる。

 現在、単身介護者向けの冊子「ひとりで悩まない介護」も制作中だ。単身介護に役立つ情報を網羅し、玉名市などで無料配布を計画している。おむつ交換や着替えなどのこつを紹介したDVD「1人でできるお世話の方法」も制作した。

 研究チームの9人はいずれも40~50代の“シングル”。生野さんを始め、おひとり介護体験者も多い。介護休業や短時間勤務などの制度の不備と、制度があっても利用しにくい雰囲気を肌で感じている。

 生野さんは「育児にも共通するが、すべての人が誰かをケアしている時代という前提での制度設計や支援がなければ、超高齢社会は乗り切れない」と指摘している。


=2014/03/27付 西日本新聞朝刊=

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