【人の縁の物語】<58>「誰もがかけがえのない存在」 自由な心 障害越える アーティスト レーナ・マリアさん

右足でグラスの水を飲み、スマートフォンを繰るレーナ・マリアさん 拡大

右足でグラスの水を飲み、スマートフォンを繰るレーナ・マリアさん

 身体障害を、生きる上での「障害」とすることなく、キラキラ輝く女性がいる。生まれつき両腕と左脚の半分がないスウェーデンのアーティスト、レーナ・マリアさん(45)。歌、絵、写真と何でも挑戦する「自由な心」を培ったのは両親だという。コンサートツアーで3月、福岡市を訪れたレーナさんに話を聞いた。

 「腕があったら便利だろうけど、私の本当の『障害』は人の名前をすぐ忘れてしまうこと。両親は私より内気な弟の方が心配だったみたい」。いたずらっぽく笑うと、右足でグラスを持ち上げて水を飲んだ。

 両親は1人でも生きていけるように、弟と分け隔てなく育てたという。転んでも自分で起き上がるよう見守り、テーブルマナーを厳しくしつけた。「興味のあることにたくさんの時間を使いなさい」と応援し、うまくいかないと「もう一度挑戦してごらん」と励ました。それが障害を「劣っていること」と感じさせない秘訣(ひけつ)だった。

 障害者との共生を目指したスウェーデンの教育システムも、自立を後押しした。義足でスケートを習い、一般の学校に通い、音楽大学へ進んで寮で1人暮らしをした。水泳にも打ち込み、ソウル・パラリンピック(1988年)では背泳ぎで4位を獲得する。「私は幸運。今のような(胎児を調べる)出生前診断があったら、生まれてくることもなかったかもしれません」

 親が子どもの障害に悩んだり、障害のない子もさまざまなコンプレックスを抱えていたりする世の中だが、彼女の生き方は「全てのことを1人でできる人などいない。でも、みんな何かはできる。一人一人がほかの誰とも違うユニークでかけがえのない存在なのです」と証明している。

 好きな言葉は「小さなことに喜びを見いだせれば、たくさんの喜びを見いだすことができる」。そのために「人間関係」を一番大切にしているという。家族や友人とのいい関係は、喜びをさらに大きくしてくれるからだ。その輪を世界へ広げようと「レーナ・マリア&フレンズ基金」をつくり、寄付を募って障害や病気とともに生きる人々を支援している。


=2014/04/01付 西日本新聞朝刊=

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