【教育委員会は変わるか 春日市の現場から】<1>本音の議論を増やす

ざっくばらんに意見を交わす春日市教委の懇談会。現場の教諭も招き「本音のところ、どうなんですか」

 教育委員会は変わるのだろうか。首長権限を強化、教育長と教育委員長を統合することなどを柱にした教育委員会制度改革案が今国会に提出される運びになった。そんな中、福岡県春日市の教育委員会では、10年ほど前から独自の改革に取り組み、全国から視察も相次ぐ。その現場から改革の行方を考えてみる。

 人口約11万人の春日市は福岡市のベッドタウン。地域住民や保護者が一定の権限と責任をもって学校運営に参加する「コミュニティ・スクール」制度を2005年度、九州では初めて本格導入した。市内の全小中学校(18校)が住民参加型の学校づくりを進めていることでも知られる。

 春日市ではあえて「制度改革不要論」を掲げ、組織運用や会議の見直し、職員の意識改革に取り組む。

 その手法は、国や県からの指示待ち、前例踏襲、形式主義、現場感覚の欠如など、平たく言えば「お役所仕事(意識)」の一掃である。地域や学校の自主性や手づくりの尊重、本音で議論、報告待ちの姿勢ではなく学校に出向く…。

 要は、現状でも教育委員会は委員の人選など、首長による一定のコントロール下にあり、組織をいじらなくても、むしろ運用方法を見直すことで、レイマンコントロール(住民統制)の実効性は高まり、教育改革は実現できる、というスタンスだ。

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 例えば毎月開く懇談会。春日市教委では毎月の定例会(教育委員会議)に加えて別途、懇談会を設け、ざっくばらんに意見交換する。

 2月の懇談会のテーマは「使える英語教育のあり方」「部活動での教員負担の軽減」「学力テストの学校別成績(平均正答率)は公表すべきか」。中学校の英語教諭や校長らも招き、「率直なところ、どうなんですか」などと突っ込んだやりとりが続いた。

 英語教育をめぐっては「義務教育で目指すべき市独自の目標を設定しよう」「英会話を習得することで、その力をどう生かしたいのか。キャリア教育とも連動すべきだ」。学力テストの学校別成績公表には、大半が反対だったが、「取り組みの成果は知りたい。他校との比較は弊害が大きいが、こんな所が伸びているとか、公表の範囲や方法には工夫ができるのではないか」。なるほどという意見や提案も目立った。

 多くの教育委員会では定例会だけが開催される。新年度予算案、条例改正案、新規事業などについて委員が審査するが、実はこの段階で教委事務局と市長との協議などは終わっている。委員もそうした内情を知っていて、追認せざるを得ないのが実情だ。こうした議論の形骸化を解消するため、懇談会は設けられた。

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 春日市の教育委員は5人。非常勤の元小学校校長の女性教育委員長、学識経験者、PTA関係者、社会教育関係者に、常勤の教育長が加わる。顔ぶれ自体は一般的だが、苦言や異論も含め、現場の声に耳を傾けようとする事務局側の姿勢が、議論の中身を深めているようだった。

 与党の制度改革案について、現場では「実態はあまり変わらない」「教育行政にスピード感は出るだろうが、暴走、偏向する首長の意向に歯止めがかけられるか」「会議が増えるだけではないか」などの声が渦巻く。ただ、制度設計をいくら改変しても、委員や職員の意識が変わらなければ、改革にはつながらない。

 次回は、春日市の教育委員会改革に尽力した一人の元春日市教委職員の話に耳を傾けてみる。


=2014/04/01付 西日本新聞朝刊=

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