株式会社NTTデータ経営研究所とのゲノム研究とレポートについて

~個人の遺伝情報と環境・行動の相互作用の科学が生み出すビジネスチャンス~
ジェノプランジャパン株式会社(本社:福岡市西区、代表取締役:小島直樹)(以下、「ジェノプラン」)はこのたび、株式会社NTTデータ経営研究所とともに遺伝環境相互作用の共同研究を行ったことをお知らせします。
これからの時代、あらゆるサービスにおいて効果効能の本質やオーダーメイドが重要になってくる中で、個人の遺伝情報と環境・行動情報双方を組み合わせた研究は次世代のビジネス構築に向けて有用なものになってくるとジェノプランは考えています。
フィットネス・メンタルケア・ヘルスケア・美容・保険・健診・医療など、様々なサービス及び業界に対して、ジェノプランは遺伝子レベルでのソリューションを提供してまいります。

ぜひ本レポート(下記URL、株式会社NTTデータ経営研究所執筆、研究実施期間:2020年10月~2021年8月)をご一読いただき、本研究についてもしくはその他幅広い観点からのご質問・ご連絡をお待ちしております。
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「遺伝子の運命に人類は抗えるのか?
~個人の遺伝情報と環境・行動の相互作用の科学が生み出すビジネスチャンス~」
株式会社NTTデータ経営研究所 情報未来イノベーション本部 ニューロイノベーションユニット
澤田 碧砂
アソシエイトパートナー 茨木 拓也
https://www.nttdata-strategy.com/knowledge/reports/2021/0830/
以下、レポート記事
遺伝リスクとは
本題の GxE の話題に移る前に、そもそも遺伝子や遺伝リスクとは何かということをおさらいしよう。両親から受け継ぎ、自らを構成するもととなっている遺伝子は個人によって異なる。その遺伝子の違いが、どのような病気にかかりやすいのか、どのような顔・体型になるのかなどの表現型の差異を生んでいる。なお、ここでいう遺伝リスクとは、病気や肥満などのリスクがある表現型になりやすい遺伝的傾向を指す。遺伝子は 4 種類の塩基(アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C))の配列からなっている。一塩基多型(SNP)とは、この遺伝子上の塩基の配列において、一つの塩基が他の人とはちがっているという状態を指している。病気の発症や肥満傾向に関係があるとされる、リスクのあるSNP のことをリスクSNP と呼び、そのリスクSNP の有無に基づいて遺伝リスクを評価する。
例えば、がん家系の人とそうでない人の塩基配列を比較して見つかった SNP に関して、その SNP ががんの発症有無をわけるのに貢献していると考えられるとき、その SNP をリスク SNP と呼んでいる(図 1)。このようなリスク SNP の保有の程度をもとに、大きく分けて 2 つの方法で遺伝リスクを測定している(表 1)。

図 1:リスク SNP イメージ図
(1)特定のリスク SNP に注目する方法(従来の方法)
これは、ある「特定」のリスク SNP に注目する方法であり、以前より使われている。たとえば、FTO rs9939609 という遺伝子は肥満傾向と関係があり、3 種類の遺伝子型(AA、AT、TT)が存在する。遺伝子型によって肥満リスクが異なり、AA の人は太りやすく、AT は中間、TT は太りにくいとされている。各個人がこの FTO rs9939609 に対してどの遺伝子型を保有しているかを元に、遺伝的な肥満リスクの有無を測るのである。しかし、ある表現型のリスクに対して、関係のあるとされる、特定のピックアップされたリスク SNP に注目してリスク判断を行うため、判断材料が限定的となってしまう可能性がある。
(2)複数の遺伝子から総合的にリスク判断する方法~多遺伝子リスクスコア(PRS: Polygenic Risk Score)
2000 年代後半に用いられ始めた PRSは、従来の特定のリスク SNP 保有の有無によってリスク予測する方法に比べ、より正確な表現型のリスク予測が可能である。スコアは、疾患に関係のありそうな遺伝子を網羅的に解析したうえで、各リスク SNP がどの程度表現型のリスクに影響を与えているのかを加味したうえで算出される。複数のリスク SNP を考慮することで、総合的なリスク判断を可能にしているのである。PRS の詳しい計算方法と、実用例については後述する。


表 1:肥満リスクを測る方法の比較

自社データを用いた「情緒不安定性」を例にした分析の実践例

NTT データ経営研究所では 5 万人にのぼる様々な個人特性をWEB上で収集した「人間情報データベース」というリサーチパネルを保有している。
https://www.nttdata-strategy.com/services/advanced_technology/human_information.html
そ の 登 録 者 905 人 の 同 意 を 得 て 、 1376 の SNP 情 報 ( 協 力 : ジ ェ ノ プ ラ ン 社https://www.genoplan.com/jp/)と「情緒不安定性(落ち込みやすいなど感情面・情緒面で不安定な傾向)」に関する遺伝因子と環境因子について実際に解析を行った。情緒不安定になりやすい性格であることは、抑うつ状態などの精神疾患をかかえる可能性が高いことが知られている。そのため情緒不安定性を改善することは、メンタルヘルスの改善にもつながることが期待される。
以下に解析の詳細を記す。
(1)PRS(遺伝的リスクスコア)の算出
1. PRS 計算手法
PRS は、大きく分けて以下の 3 つのステップを踏んで計算した(図 6)。
1. PRS モデルの構築:どの SNP がどの程度疾患リスクに貢献しているのかを測る
全員分の SNP を予測子に、情緒不安定性を目的変数とした回帰モデルを学習させ、個々のSNP がどれだけ情緒不安定性に影響を与えているのかを係数β値で評価できるようにした。具体的には、100 分割交差検定によるLASSO 回帰モデルを用い、予測に関係のない予測子は排除した。
2. ひとりひとりの SNP データとの照合:個人がどのリスク SNP を保有しているかを照合
3. スコア計算
リスク SNP を PRS モデルの係数β値で重みづけし、リスクスコアを算出する。


図 6:PRS の計算方法

2. 情緒不安定性を予測するPRS モデルの結果
情緒不安定性の遺伝リスク予測因子となったリスク SNP は全部で 93 あった。その中にはrs2964802 など、うつとの関連性が報告されている遺伝子も含まれていた。rs2964802 は比較的β値も高く(β=0.18)、より情緒不安定性の表現型に関連していると考えられる。rs2964802遺伝子には TT、CT、CC の 3 種類の遺伝子型が存在しており、TT、CT の遺伝子型と比較して、CC が情緒不安定に最もなりやすく、この CC 型が情緒不安定性のリスク SNP のひとつであることがわかった(p=0.02)(図 6 左)。また、選出されたリスク SNP をもとに算出した PRSによる情緒不安定性の予測精度は予実相関で 0.58 であった(図 7 右)。


図 7: PRS 計算結果
左:rs2964802 の遺伝子型による情緒不安定性の比較
右:被験者ごとの PRS による予測結果と実際の情緒不安定性(相関係数=0.58)

(2)GxE 解析
情緒不安定性の PRS(遺伝リスク)と実際の情緒不安定性(表現型)との関係性に、環境因子(人間情報データベースに登録されている変数)による差がでるかを調べたところ「情緒不安定性の PRS」×「レジリエンスの高さ(ストレス状況に対してうまく適応・対処できる能力)」に交互作用効果があることがわかった(p=0.01)。つまり、情緒不安定性の PRS(G:遺伝因子)が実際の情緒不安定性へ与える影響が、レジリエンスの高さ(E:環境因子)によって修正されていたと解釈できる。PRS が高い人において、レジリエンスが高いグループの人の方が、レジリエンスが低いグループの人よりも実際の情緒不安定性が低くなっていた(図 8)。このことより、レジリエンスを高めることで、情緒不安定性の遺伝的なリスクを減らすことができることが示唆される。


図 8:レジリエンスの強さによる情緒不安定性の遺伝的影響の比較

(3)有望な介入方法~レジリエンスを上げるには?
1. レジリエンスを上げるための方法
では、どのようにしてレジリエンスを高めたらいいのだろうか。「感情の言語化」はレジリエンス強化の方法のひとつとして報告されている。蜘蛛やケガといった嫌悪感を誘発する写真を見せたときの心拍や発汗などの反応を調べた実験では、写真と同時にネガティブさを表すキーワードを文字で表示させることで、写真への反応性が下がった。つまり、ストレスなどの刺激に対する自分のリアクションを言語化してあげることが、レジリエンス強化につながるのである。他にも、日々自分が大切にしたい価値観を意識して生活することもレジリエンス向上につながってくる。例えば「知識を習得する」のような行動目標が自分にとってどのくらい価値があるのか、そしてその目標達成のための行動をどの程度とることができたかといった質問に回答して算出された「価値ある生活スコア」をレジリエンスの高さで比較した研究では、その「価値ある生活スコア」が高い人ほど、レジリエンスが高いという結果が得られた。さらには、瞑想、朝型の生活、7~8 時間程度の適度な睡眠、有酸素運動 、栄養を損なわない範囲での食事制限などもレジリエンス強化に効果があるとの報告がされている。
このように、GxE 解析で介入すべき変数が特定できれば、さまざまな介入を選択肢として提供することが可能となる。

2. レジリエンス強化とエピジェネティクスの変化
ストレス環境・レジリエンスに関わるエピジェネティックレベルでの変化も多数報告されている。日常的に感じるストレスと、セロトニントランスポーター遺伝子を抑制する DNA メチル化の変化を調べた研究では、ストレスレベルによって DNA メチル化量が変化しうることが分かっている。また、ストレスへの回復力を指すレジリエンスの表現型に関しても、レジリエンスの高いマウスと低いマウスとでは DNA メチル化の量に差があることがわかっている。そのため、レジリエンスの差を生み出すエピジェネティックな観点にも注目し、どの遺伝子型を持っている人がどのような環境変化でレジリエンスが向上するのかといった研究の観点も有益だと言えるだろう。

氏や育ちであなたの運命は決まらない ~本人が選択できない「環境」によるエピジェネティックな悪影響も回復可能

これまで見てきたように、生まれ持った遺伝的な影響は行動や環境次第で変わりうる。一方で「環境」も容易に選べるものでもない。虐待のある家庭や、ハラスメントのある職場に置かれている人はその環境を自ら変えることは容易ではないはずだ。そして悲しいことに、こうしたストレス環境に身を置くことは、精神疾患リスクという点に関して、エピジェネティックに「悪い」影響をもたらしうる。けれど、そのような過去の経験に基づくエピジェネティクスへの影響さえも、介入によってあとから回復できる可能性が示唆されている。例えば幼少期の家庭環境や職場の環境によって生じる避けがたいストレスが原因となって、精神疾患リスクを高めるエピジェネティックな変化(DNA メチル化)が起こってしまうことがある。しかし、そのようにして一度起こったエピジェネティクス変化を、後から修正できることも分かってきた。2020 年に発表されたレビューの中で、不安症を抱えている患者を対象に行われた認知行動療法の治療介入実験と、セロトニントランスポーター遺伝子への DNA メチル化の変化を調べた実験が紹介されている。この研究によると、6 ヶ月間の治療介入を経て、治療効果がみられた人において、DNA メチル化が介入前より有意に増えていた。このように精神疾患を患っていたとしても、認知行動療法のような介入によって、DNA レベルで精神疾患を緩和させる変化を起こさせることができるのである。加えて、心理セラピーやマインドフルネスなどもエピジェネティクス修正に有効な介入として紹介されている。
氏も育ちも変えられない運命ではないのだ。

GxE の先にある個人最適化~個人の遺伝特徴ごとに、効果的な介入を知る

ここ数年で、各個人が保有する遺伝的傾向の特徴抽出、またその遺伝的傾向を克服するための介入について数多くの研究がなされてきた。では、どのような介入が自分には最も効果的なのだろうか。個人の遺伝情報と環境の相互作用を知ることでさらに可能になってくるのが、「どの遺伝子型を持つ人が、どのような行動をとると、目標とする表現型の変化が起こせるのか」という個人への介入の最適化、つまりはパーソナライズの実現だ。
例えば日常的に感じるストレスによる、セロトニントランスポーター遺伝子を抑制する DNA メチル化の仕方は、セロトニントランスポーター遺伝子の遺伝子型によって差があることがわかっている。そのため、遺伝子型に応じて異なるストレス対処法が必要になってくるだろう。
他にもうつ病治療に関して、セロトニントランスポーター遺伝子における DNA メチル化量の個人差が、抗うつ薬の有効性についての個人差に影響していることがわかっている。うつ病患者を対象とした6 週間の抗うつ薬摂取経過観察の結果、セロトニントランスポーター遺伝子の発現を抑制する DNA メチル化が低レベルの患者には抗うつ薬が効かなかった。
このように、遺伝子の個人特性に応じ、より効果的な介入方法を探していくことも可能である。個人の遺伝的特性の分析と効果的な介入方法を模索していくことは、最適ながん予防、ダイエット、認知機能の向上、精神疾患治療などの提案に役立つはずだ。

おわりに

本稿では、遺伝子による疾患や肥満などの先天的なリスクが、後天的な介入によって修正できる可能性について紹介してきた。
遺伝リスクを克服するまでには、
1. 遺伝リスクを知る
2. 介入方法を知る
の大きく分けてふたつのステップがある(図 9)。
まずリスク SNP の有無をもとに PRS などによって遺伝リスクを測る。この結果により遺伝リスクが高いことが分かった場合、そのリスクの高い遺伝子の活動性を変え得る環境因子を操作する。精神疾患リスクを高める DNA メチル化を減らすためのストレス環境を整えるといった介入はここにあたる。ここでポジティブな環境を作ることができれば、リスク SNP を不活性化させるような DNA メチル化の変化を促し、結果としてうつリスクの低い健康なメンタル状態へとつなげることができる。
逆に、家庭環境や職場の問題等でそもそもストレス負荷の大きい環境にさらされていた場合、リスクSNP は活性化し、結果としてうつリスクを高めてしまうこともある。しかし、介入2.にあるようなマインドフルネスや認知行動療法を通じて、これらのリスク SNP を不活性化させるようなエピジェネティックの修正も可能である。


図 9:遺伝リスク克服までのフロー

このようにして、自分の遺伝子および環境状態の把握とそれをもとにした適切な介入を通じて、メンタルおよびフィジカルともに、より健康な体へと導くことが可能となる。こうしたことを支援するサービスはまだ市場ができていないが、ニーズは大きいのではないだろうか。

生まれ持った遺伝子や置かれた環境を変えるのは確かに難しいかもしれない。
また、遺伝的な傾向は受け入れざるを得ないと思っている人、過去のトラウマに捕らわれている人も多いのではないだろうか。

しかし今回紹介したような GxE の科学は、これからの人生は変えられることを明確に示している。あなたが望めばもっと健康になれるし、幸福にもなれる。変えられない遺伝子や過去に縛られることなく、なりたい未来の自分を思い描いている人を支援するような事業が現れることを期待して、本稿を締めくくりたい。
※より詳細な事項はレポート本文を参考にされたい
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【ジェノプランジャパン株式会社について】
本社:〒819-0388 福岡県福岡市西区九大新町4-1 福岡市産学連携交流センター221号室
代表者:代表取締役 小島 直樹
設立:2015年4月10日
資本金:10,000万円
Tel:03-6629-3294
URL:https://www.genoplan.com/jp/#/
事業内容:遺伝子解析サービスの提供

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