【おひとり介護】<5完>「借りる手」多く持つ

1人で両親を介護する大橋晶子さん(左から2人目)の家には、元民生委員の山下信行さん(右)が頻繁に訪れる 拡大

1人で両親を介護する大橋晶子さん(左から2人目)の家には、元民生委員の山下信行さん(右)が頻繁に訪れる

 「身につまされる思いです。(母の介護が始まったら)ストレスでいっぱいいっぱいになるんじゃないかな」(60歳女性)

 「私と同じ思いをしている人がいることを知り、表現できない気持ちになりました」(男性)

 連載「おひとり介護」には、読者からこんな共感の声が寄せられた。高齢社会の今、誰かの子どもとして生まれた私たちにとって、親の介護は避けられない問題だ。特に、40~50代で介護に直面すると、仕事との両立や経済的不安、社会的孤立感などに悩まされてしまう。どうすれば「おひとり介護」を乗り切れるだろうか。

 福岡県筑紫野市の大橋晶子さん(44)は、要介護1の父(78)と要介護3の母(75)を在宅介護中。仕事を辞め、毎日を両親の世話に費やす。「親の面倒を見るつもりではいたけれど、一気に来るとは思わなかった」と言うものの、悲愴(ひそう)感はない。「経済的にあと1~2年は大丈夫」とおうようだ。

 父は週4回のデイサービス・デイケアに通い、母も週3回の訪問介護や訪問看護を利用。福祉器具レンタル業者など誰かが毎日、家を訪れる。

 中でも昨年11月まで民生委員だった山下信行さん(77)の存在が大きい。筑紫野市の「介護を考える家族の会」代表でもある山下さんがケアマネジャーを紹介し、両親の入退院時も付き添った。民生委員を辞めた今も週2~3回は自宅を訪れ、メールで相談に乗る。

 「ささいなことで頼れる存在が近くにいるのは心強い」と大橋さん。山下さんは「地域に“おせっかいを焼く”人が必要」と考えている。

 福岡市西区愛宕浜のマンション群の集会所。昨年7月から月1回、下島康則さん(68)が「介護を考える『歌カフェ』」を開いている。毎回30~40人が介護に役立つ情報を聞き、ボランティアの歌でくつろぐ。

 妻の節子さん(62)は3年前、若年性認知症と診断された。子どもがいない下島さんは頼れる人が少ない中、もがき苦しんだ。介護保険制度の内容や手続きに始まり、デイサービスなどの施設探し、受け入れてくれる美容院…。知りたい情報は山ほどあったが、相談・手続きの窓口がばらばらで右往左往した。

 「家の近くにげた履きで、安心して相談に乗ってもらえる人や場所があったら、負担は減るはず」。それがカフェを始めた動機だ。協力者が増え、自分と同じ悩みを抱える人を公的サービスにつなげることもできている。下島さんは「人間関係が希薄な都市部だからこそ、あちこちにこんな場ができれば」と願う。

 「借りる手は多いほど楽」。認知症の人と家族の会福岡県支部が掲げる認知症介護のポイントの一つだ。自らも妻(70)を在宅介護する代表の内田秀俊さん(73)は「公的サービスでも民間サービスでも、求めればどこかに必要な支援はある。介護者自身がつながる姿勢を持って」と呼び掛ける。

 社団法人「認知症の人と家族の会」(本部・京都市)=(0120)294456=は九州7県に支部があり、電話相談や定期的な集いも実施。内田さんによれば、体験者の話を聞くだけでも先の見えない介護の「先」が多少は予測でき、心構えができる。

 とにかく抱え込まず、抱え込ませないこと‐。国が介護を「施設から在宅へ」と移行させている今こそ、「おひとり介護」を生まない環境整備が必要になってくる。

  =おわり


=2014/04/03付 西日本新聞朝刊=

PR

PR

注目のテーマ