命いただく 実践し感謝 福岡の畠山さん 「狩猟生活」を本に

講演会でイノシシの皮で作ったバッグを取り出して説明する畠山千春さん。脂もろうそくにするなどして利用する 拡大

講演会でイノシシの皮で作ったバッグを取り出して説明する畠山千春さん。脂もろうそくにするなどして利用する

畠山千春さんが出版した本

 一つの命が食べ物になって食卓に並ぶ-この「当たり前」を見つめ直すきっかけになればと、福岡県糸島市の畠山千春さん(28)が著書「狩猟女子の暮らしづくり わたし、解体はじめました」(木楽舎、1620円)を出版した。192ページに、命を奪うことの意味、命への感謝などをつづった畠山さんを訪ねた。

 3年前までは横浜市の映画配給会社で働く“普通”の会社員だった。契機は東日本大震災。「当たり前」はある日突然、そうではなくなるかもしれない。大量生産、大量消費に疑問を抱き「自分の暮らしは、自分の手でつくらなければ」と思った。

 まず思いついたのが食べ物だった。スーパーに並ぶ肉から、生きていた時の姿は想像しづらい。隠れているプロセスに目を向け、自分の手で最初から最後までを体験してみたくなった。

 2011年10月、初めて鶏を解体した。絞めて、血抜きし、羽をむしって料理して…。とさかから足まできれいに食べた。「さっきまで生きていた命が自分の一部になった感じがした。食べるって、命そのものをいただくことだったんだ」

 そんな感動をブログにつづると「私も体験したい」という声が多く寄せられた。山梨の料理人の元で修行した後、大人も子どもも参加できるワークショップを始めた。「命のやりとりは、その現場でしか感じられないことがいっぱいある。たくさんの人に感じてほしい」。座学に続いて実際に鶏を解体して食べ、感想を分かち合っている。

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 本では、畠山さんが命と真剣に向き合い、悩みながら成長していく姿がエッセー形式でつづられる。

 例えば、第2章の「烏骨鶏(うこっけい)編」。ワークショップを重ねるうちに「スーパーで買って食べることと根本的に変わらない」と考えるようになり「育てて食べる」を実践する様子を描いた。名前を付け、毎日餌をあげ、抱いた鶏を誕生日に絞める。「一生忘れられない深い味がしました」

 第3章では、狩猟免許を取得し、わなを作ってイノシシを捕獲する過程を描いた。命を奪うとはどういうことか。狩猟を通じて考え、答えを探していく。わなの仕掛け方や仕留め方も盛り込み、狩猟の入門ガイドにもなっている。

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 インターネットを通して解体や狩猟の情報を手に入れ、専門家とも巡り合えたという畠山さん。「少しでも自分の経験が参考になれば」と、自身もブログやツイッターで情報を発信している。反響は大きく、賛否両論が寄せられる。ブログが炎上し「動物虐待」と批判されたこともあった。

 畠山さんは「人は、一つの命も奪わずに生きていくことは難しい」という。時には農作物を守るために動物が駆除され、家を建てるために動物のすみかが奪われる。「私は命を奪うことを罪とするより、自分の命がほかの命なしに生きていけないと認めて感謝し、自分の絞めたものを食べて生きていきたい」。そんな思いから発信を続けている。

 昨春仕事を辞め、現在は糸島のシェアハウスで暮らしている。田畑を耕し、野草を摘み、ワカメを採る。自給自足を目指している。肉食に思われるが、自分で絞めた肉しか食べないため、ほぼベジタリアンだという。

 「新米猟師でまだまだ勉強中。失敗を重ねる姿に共感し、こういうテーマを少しでも身近に感じてもらえたらうれしい」


=2014/04/09付 西日本新聞朝刊=

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