聴覚障害者たちが学習教室 NPO法人 福岡に設立 同じ境遇の子 支援

障がい者相互支援センターMCPを運営する(左から)市川杏奈さん、山口沙希さん、本田いずみさん 拡大

障がい者相互支援センターMCPを運営する(左から)市川杏奈さん、山口沙希さん、本田いずみさん

手話や口の動きなどをフルに使って勉強を教える山口沙希さん

 障害がある人たちの「学び」を保障したい-。聴覚障害がある女性とその友人がNPO法人「障がい者相互支援センターMCP」を立ち上げ、聴覚障害児・者の学習支援教室を開くなど地道な活動を続けている。大学や短大などの高等教育機関で障害者が学びやすい環境整備につなげるのが狙いという。

 「学校の先生になる夢をかなえるため、もっともっと勉強したい」。生まれつき聞こえない中学1年の山本正樹君(12)=福岡市東区=は、同じ聴覚障害がある山口沙希さん(24)=佐賀市出身=からマンツーマンで勉強を教わり、目を輝かせた。

 MCPの学習支援教室「みこクラブ」は、聴覚障害者が苦手な助詞の使い方や敬語、読解力などを学ぶオリジナル教科「日本語」を中心に1対1で教えている。「日本語力」が上がると、算数の文章問題も解けるなど全般的な学力向上につながるという。現在は福岡、佐賀などで開き、4歳から20代の社会人まで13人が通ってくる。

 博物館などの公共施設での課外授業も重視し、公共の場での振る舞いなど社会性も厳しく教える。高等聴覚特別支援学校(福岡市)から筑紫女学園大(福岡県太宰府市)に進んだ山口さんが「助けてもらって当たり前という甘えをなくし、聞こえる人とのコミュニケーションやマナーを学んでほしい」と考えるからだ。

 山本君は特別支援学校での勉強に満足できず、塾や家庭教師も体験したが、ついていけずに断念した経験がある。母の恭子さん(42)は「みこクラブで勉強への意欲が高まり、外出先でも自分から周囲に話し掛けるようになった」と喜ぶ。

 MCPは2012年2月、山口さんが大学の同級生の本田いずみさん(24)と発足させた。本田さんは大学時代、講義内容を要約筆記で伝える「ノートテイカー」として山口さんを支え、内定していた就職先を断って活動を始めた。本田さんの幼なじみで、突発性難聴のためにフルート奏者の夢を諦めた市川杏奈さん(22)=東京出身=も加わった。

 それぞれ親の反対を押し切って、福岡県大野城市で3人暮らし。年間活動費は約300万円。みこクラブは教材費などの実費のみ負担のため、補助金や寄付に頼る活動だが、3人は「生活が厳しくてもやる価値がある」と言い切る。

 日本学生支援機構の調べ(13年度)では、大学・短大などで聴覚障害を含む障害のある学生支援の専門委員会がある学校は17・1%にとどまっている。山口さんも訓練の成果で口話ができるため、聞こえていると思われて支援が受けられないなど苦労した。MCPは、大学などでの支援者を増やそうと、ノートテイクやパソコンテイクの講習会なども開くが、九州の大学の関心は薄いという。

 このため「進学する子どもたちを増やすことで環境整備を進めたい」と、小中高校生への学習支援に重点を移している。今春、教え子の一人が九州の大学への進学を果たした。

 「障害の有無に関係なくお互いに歩み寄る社会にしたい」-。手話と口話を織り交ぜながら共に生きる3人の挑戦は続いている。

 MCPへの問い合わせはメール(mcp_jimukyoku@yahoo.co.jp)で。


=2014/04/11付 西日本新聞朝刊=

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