「誤嚥性肺炎」防ぐには 稲川利光医師に聞く 口を動かし 体を動かそう

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稲川利光医師

 日本人の死因は長らく(1)悪性新生物(がん)(2)心疾患(3)脳血管疾患-の順だったが、2011年から肺炎が3位になった。80歳を超えるとリスクは著しく高まる。その大半は食物や唾液が口腔(こうくう)内の細菌と一緒に気管から肺に入る「誤嚥(ごえん)性肺炎」だ。リハビリテーション専門医で「介護する人のための誤嚥性肺炎」(主婦の友社)を監修した稲川利光さんに、高齢者を命の危険から守る方法について語ってもらった。

 ■再発しやすい理由

 何らかの疾患や障害と一緒に暮らすお年寄り。ちょっとしたことが原因で意欲や食欲を失い、低栄養や筋力低下につながることもしばしばです。その結果、使わない機能が衰え、ものをのみ込む嚥下(えんげ)が上手にできずに誤嚥を招きます。

 肺炎になると体力が消耗し、ますます誤嚥しやすくなって、また肺炎になるといった悪循環に陥ります。仮に病院で肺炎は治っても、うまく食べられないまま退院される方は少なくありません。口から食べられずに低栄養の状態となり、体力が衰え、入退院を繰り返すうちに、ほかの病気も併発して寝たきりに…。これを防ぐためには、本人はもちろん、お世話をする介護者が誤嚥性肺炎を正しく理解する必要があります。

 一般的に嚥下障害がある場合、「のみ込みやすい方がよかろう」とゼリーやペーストのようなものばかり与えがちです。でも、術後の流動食しか喉を通らない非常時を除けば、かむことを無視した嚥下食、嚥下訓練には問題があります。

 口が開いていると口腔内が乾燥し、嚥下は非常に悪くなります。舌は喉の奥の方に引っ込んだ状態になり、常態化すれば舌の萎縮にもつながります。

 ■昆布をかんで回復

 表に10のポイントをまとめました。誤嚥性肺炎の予防は、口をきれいにし
た上で「日常的によくかんで腹八分、いつもにこにこよく歩く」に尽きます。中でも「よくかむ」「正しく鼻から呼吸する」は重要です。

 脳梗塞で、重い左まひと嚥下障害があった80歳の長次郎さんは、いつもうとうと、ぽかんと開いた口の中はカラカラ。舌は奥に引っ込み、喉には常にたんが絡んでいました。

 唇を閉じて唾液をのみ込むには、奥歯で十分にかむことが重要です。そこで昆布を短冊に切り、かんでもらうようにしたら、たった1度の咀嚼(そしゃく)で顔つきが一変。舌を動かすことで唾液が出て、喉の粘膜が潤い、1週間後には座ってゼリーを食べられるまでに回復しました。

 誤嚥の予防に向けての関わりは、お年寄りが最期までその人らしく暮らしていくための大切な支援。肺炎になった方はもちろん、元気な方も正しく口から食べることの大切さを理解し、誤嚥性肺炎の予防に努めてほしいです。

 ▼いながわ・としみつ 1954年、福岡市出身。九州大農学部から九州リハビリテーション大学校へ。卒業後、理学療法士を経て医師に。現在はNTT東日本関東病院リハビリテーション科部長を務める。遊びながら機能を回復する「遊びリテーション」の考案者としても知られる。


=2014/04/11付 西日本新聞朝刊=

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