お隣さんはごみ屋敷 敷地内は自治体が手出しできず、解決の近道は…

 「自宅の隣が『ごみ屋敷』で困っています」。静岡新聞の双方向報道「NEXT特捜隊」に、静岡市駿河区の自営業の男性(58)から切実な訴えの投稿が届いた。早速、現場に向かった。

 住宅街の一角に、道路標識を覆うほど樹木が生い茂る光景が目に飛び込んできた。敷地内はプラスチックや段ボールなどの「ごみ」が大量に散らばり、隣家の外壁にも密着して積み重なっていた。

 投稿者や近隣住民によると、敷地内の小屋には男性が1人で住んでいるとみられ、20年ほど、この状態が続いているという。地元町内会も「ごみ」を片付けるよう説得しているが、男性は応じないという。

 投稿者は「店舗の壁にはシロアリの被害が出ている。ごみの撤去に応じてくれないため、修復工事もできない。ヤブ蚊やネズミの被害もある。土地の境界にあるブロック塀とフェンスは雑木に押されて傾き、倒壊を懸念している」と嘆く。

 「ごみ屋敷」の男性に直接考えを尋ねた。「少しずつ片付けている。勝手に捨てられるのは嫌なので、誰にも手伝ってほしくない。ごみじゃない」と話す。

 「ごみ」は撤去できるのか。静岡市にごみ屋敷に特化した条例はない。生活トラブルに詳しい佐藤治郎弁護士は「たとえ隣家にごみが密着していても、敷地内にあるなら本人の許可なく処分することはできない」と説明する。

 居住者の男性に片付けを説得している静岡市廃棄物対策課の担当者は「本人が処分の意思を示してくれれば、職員が手伝って片付けることはできる」という。

 解決策はあるのか。佐藤弁護士は「シロアリ被害などは民事訴訟で損害賠償を請求することも可能だが、抜本的な解決は強制力に頼らざるを得ない面もあると思う。ごみ屋敷は全国的にも増えている。自治体は問題を抱える市民の声に耳を傾け、状況によっては条例制定も検討すべきだ」と指摘する。

 投稿者は男性と土地の所有者に「ごみ」の撤去や樹木の伐採などを求めてこの夏、裁判所に民事調停を申し立てた。「男性の財産権は保護されるのに、実害を受けている自分の財産権がないがしろにされているのは理不尽。調停は金銭的な負担もある。やはり『ごみ屋敷条例』の制定が問題解決の一番の近道だと思う」と述べた。

問題抱える人への支援も重要

 全国の自治体に先駆け、東京都足立区はいわゆる「ごみ屋敷条例」を2013年に施行し、これまでに800件以上の相談・苦情を解決してきた。福岡市や北九州市にはない条例だ。

 条例では、ごみ屋敷などの原因をつくってしまう人への支援を盛り込みつつ、廃棄物の放置などで周辺の生活環境に著しい障害を及ぼした場合、土地所有者らに対して命令や公表、代執行など厳しい措置を可能にしている。

 不良状態にある土地などへの立ち入り調査をはじめ、戸籍や税の調査もできる。さらに、区の対応方針について第三者に意見を求めるため、医師や弁護士らでつくる審議会を設置。樹木の伐採やごみの片付けを支援した自治会などに対する謝礼金の制度もある。

 足立区生活環境保全課の志田野隆史課長は「強制的にごみを片付けるだけではいずれ再発してしまう。ごみをため込んでしまう人は何らかの問題を抱えている可能性があり、人への支援に重点を置いている」と条例の特色を語る。

 また、自治体に条例などがない場合、ごみ屋敷の対応は役所内の担当課が曖昧で、たらい回しになりがちという。足立区は担当を生活環境保全課に設定し、福祉や都市建設、環境など各部局が連携する対策会議や現場対応を協議するケース診断会議を実施している。

 志田野課長は「当事者との信頼関係の構築が最も難しい。時間はかかるが、原因者の抱える問題を一つ一つ解決することが重要」と話す。

(静岡新聞・寺田将人)

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