【震災3年 もしもに備えて】災害時「多様な性」にも難題 「自分に置き換えて考える視点を」 困難なカミングアウト

 ■新訳男女■ 
 東日本大震災時の避難所では、着替えや授乳などで女性への配慮が行き届かなかった点が指摘された。では、同性愛や心と体の性が一致しないトランスジェンダーなど多様な性の人たちは、どうだったのか。東北を中心に活動する当事者支援団体「性と人権ネットワークESTO」(秋田県)会員の内田有美さんが調査したところ、多くの困難に直面していたことが分かった。内田さんに詳しく聞いた。

 内田さんは2012年、震災時に岩手、宮城、福島の3県に住んでいた17人と3県以外の67人にインターネットで当事者アンケートを実施。被災者には聞き取り調査も行った。震災時に困ったことや受けた支援、震災後の変化、被災していない場合は災害時に不安なことなどを尋ねた。

 その結果、特に避難生活、支援物資、健康不安の3点で困難に直面するケースが多いことが浮かび上がった。

 避難所などではトイレや更衣室、風呂など男女別の場面が多い。「入浴できず、ウエットティッシュで全身を拭いて消臭剤をかけた」「体を隠して男湯に入った」などの体験が寄せられた。支援物資では、希望する服が選べなかったり、化粧品や下着が手に入らなかったりしたという。

 トランスジェンダーの当事者にはホルモン剤を投薬している人がいる。薬が不足して代替品を使ったことで、副作用が出た例もあった。同性のパートナーが病院に搬送されたり、死亡したりした場合に家族と扱われないのでは‐という不安を挙げる人も多かった。

 支援情報を発信した当事者団体もあったが、被災者の多くが「知らなかった」。被災3県以外では4人に3人が「当事者団体の支援が必要」と回答した。内田さんは「当事者団体だけではカバーしきれないし、情報発信にも限りがある。女性支援など他の団体との連携も大切」と指摘する。

 カミングアウトをめぐる課題も、あらためて考えなければならない。

 あるトランスジェンダーの当事者は避難所生活を送る中でカミングアウトし、性自認の女性として生活できた。当初は周囲と距離を置いていたが、他の避難者と交流が広がるうちに、鏡が欲しいなど避難所運営への要望も伝えられるように変わったという。

 一方、パートナーの妹が自宅に避難してきたとき、2人の関係を告げられないまま一緒に生活してストレスがたまった人もいた。ある当事者は被災者相談窓口の利用をためらった。特に避難所のような狭いコミュニティーの中では打ち明けにくい現実がある。内田さんは「当事者に『声を上げて』という前に、社会の無理解や偏見を変えていかなければ」と強調する。

 もちろん避難所運営において、男女別の区分けは防犯上有効だ。さらにユニバーサルトイレや個室シャワーもあれば、誰もが気兼ねしなくて済む。衣類などの物資はサイズ別に分ければ好きなものを選びやすい。

 内田さんは「当事者だけの問題として切り捨てるのではなく、自分に置き換えて考える視点を持ってほしい。非常時こそ、誰もが個人として尊重される支援のあり方を今後考えていく必要がある」と話している。

    ×      ×

 ●性犯罪被害者 「思い」を募集 北九州のNPO

 暴力被害などに遭った女性を支援するNPO法人「FOSC」(北九州市)が、性犯罪被害者の思いや体験をつづった文章を募っている。

 集まった被害者の声は保護観察所などで再犯防止の教育に役立てる。手書きかパソコン入力で、匿名可。被害者の家族や支援者の思いも募集している。

 ファクス=093(541)5805=か、メール(jd3rm9@bma.biglobe.ne.jp)で応募する。問い合わせはFOSC=093(541)5805。 


=2014/04/12付 西日本新聞朝刊=

PR

PR

注目のテーマ