【こんにちは!あかちゃん 第16部】シニア世代の役割とは<3>保育の人手不足軽減に

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神理幼稚園で預かり保育の子どもたちと遊ぶ山田さん

 夕日が差し込む北九州市小倉南区の神理幼稚園。園児が定時で帰った後も残っている「預かり保育」の子どもたちが、教室でお絵描きやあやとりをしてくつろいでいる。その世話をする3人の職員の中に、75歳の山田真弓さんの姿があった。

 希望の保育所に入れない子や親が働いていても幼稚園に通いたい子などを受け入れる「預かり保育」。保育所の待機児童問題を解消する一助になるとして導入が進められるが、全国的な現場の人手不足が壁の一つとなっている。

 山田さんは週3回、午後3時半から2時間半勤務している。フルタイムを望む若い保育士や幼稚園教諭には満足できない条件でも「このまま老けていくのかな…。外に出て社会とつながっていたい」という山田さんにはちょうど良かった。

 元中学教諭。定年退職後は年金暮らしの日々だった。それでも登山が趣味で、体力にはまだまだ自信がある。「教職経験が生かせる子どもに関われる仕事ができたら」。そう思い立って職を探していたところ、昨年11月に今の仕事が見つかった。

 「子どもと遊んでいると『待つ』ことの大切さを再認識させられます。働きながら教育の奥深さを感じられるなんて…」。充実の日々を送っている。

 JR博多駅から徒歩5分のビルにある福岡県の「70歳現役応援センター」。2012年4月に開設されたシニア世代のハローワークだ。山田さんもここで仕事をあっせんされた。

 60歳以上の男女を対象にした内閣府調査(08年)によると、「働けるうちはいつまでも」が37%で最も多かった。こうした就労意欲の高いシニアの受け皿としてセンターは設立された。この2年間で延べ1万5千件の相談を受け、1023人の就労につなげた。

 ただし、幼稚園や保育所へのあっせんは、山田さんも含めてわずか3人にとどまっている。センター長の南里妙子さんによると、求職者は少なくないが、求人側に「乳幼児と接するのは体力勝負」という意識が強いのか、高齢者は敬遠される傾向にあるという。

 「短い時間だから体力的には大丈夫」と山田さん。雇用した園長の巫部祐彦(かんなぎべさちひこ)さんは「さすがは元先生。子どもと接するのに慣れている」と評価する。

 さらに5月からは、園で放課後児童クラブ(学童保育)を始める計画だ。こちらも放課後のみの短時間勤務。巫部さんは、山田さんに「まずは預かり保育で慣れてもらい、長年の教師経験を放課後児童クラブの方で生かしてほしい」と期待している。

 少子化で労働力人口の減少が予想される中、山田さんのような働き方は、子育て現場に限らず、ニーズは高まりそうだ。法政大経営大学院の藤村博之教授(人的資源管理論)は「高齢者が隙間を埋めるように経験や技能を発揮してもらえれば、若い人たちの就労機会を奪う世代間対立も避けられ、子育て世代の負担は大幅に軽減される」と指摘する。

 働くことが、かわいい孫をはじめ、次世代のためになる-。みなさん、意欲が湧いてきたのでは? 


=2014/04/17付 西日本新聞朝刊=

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