【こんにちは!あかちゃん 第16部】シニア世代の役割とは<5完>「幼老共生」 地域の中で

「アン・シャーリー保育園」では日常的に園児とお年寄りが触れ合っている 拡大

「アン・シャーリー保育園」では日常的に園児とお年寄りが触れ合っている

 よちよち歩きの子が園庭を横切り、保育所から老人ホームへ。部屋に入り、おばあちゃんにおむつを替えてもらったり、手遊びを教えてもらったり。

 福岡市早良区にある認可施設「アン・シャーリー保育園」。同じ敷地内に有料老人ホームが立ち、出入り自由になっているので、入居者21人と園児102人は日常的に触れ合っている。

 「子どもは笑顔と元気を、お年寄りは知識と優しさを、お互いに与えてくれています」。園長の高田映子さん(56)は、9年目を迎えた「幼老共生施設」に手応えを感じている。

 もともとはホームのみを運営していた。開設は2004年。その年のクリスマス会に、小学生だった高田さんの次男が友達と一緒に参加したのが契機となった。「何でしわが多いと?」。素朴な質問に、うつむいていたお年寄りが顔を上げてほほえむ‐。そんな姿に「介護に効果があるのでは」と思い立った。

 併設は入居者にとっても“役割”を見つける機会となった。保育士の目が届かないところで「危なかよ」と声を掛け、園児が難を逃れたこともある。掛け値なく褒めてくれるので、園児に自己肯定感が芽生えていく。

 「私たちの保育方針に欠かせない存在です」と高田さん。最近は、地域のお年寄りも園に顔を見せるようになったという。

 核家族化が若い世代を“孤育て”に追い込む。一方、高齢者の孤独死は後を絶たない。双方が交流しながら地域での孤立を解消しよう‐この幼老共生の考え方を、アン・シャーリー保育園は体現した施設といえる。

 国もその効果を認め、昨年1月には全国の「宅幼老所」の実践例をまとめるなど、約20年前から推進の姿勢は見せてきた。

 ただ、運営費などの助成に宅幼老所単独の事業はなく、施設側は保育や介護の各制度を組み合わせて活用しているのが実情だ。保育所を運営する法人の3割が高齢者施設も同時に運営しているとのデータはあるが、併設かどうかは不明で、国も宅幼老所の数は把握していない。

 厚生労働省は「お年寄りが見守るのは善意の範囲であり、公的サービスを提供する以上、それぞれの専門職が世話をするのが筋」と説明する。一方で、縦割り行政の弊害も見え隠れしており、九州大大学院の安立清史教授(共生社会学)も「少子化と高齢化を分けて考えるから経費がかかる。幼と老をつなぐ施策を考えなければ」と指摘する。

 「施設」を造るとなるとハードルが上がるが、福岡県飯塚市のNPO法人・幼老共生まちづくり支援協会は「地域」を舞台に共生の実践を試みている。

 「お年寄りが元気でないと子どもも元気にならない」。そう話す代表の森本精造さん(72)は元教育長。現役時代、放課後の教室で高齢者が昔遊びや道具の使い方を教えて交流する「子どもマナビ塾」を始め、引退後の10年に協会を設立した。

 翌年から地域の小学生を対象にした体力テスト「e‐マナビリンピック」を小学校のグラウンドで始めた。現代っ子たちの体力向上を目指すとともに、記録員など運営スタッフを高齢者が務めている。「マナビ塾」も公民館などで続けている。

 「老いも若きも幼い子も、みんなが幸せに生きられる社会にしたい。そのためにはお年寄りが必要とされる舞台をつくらなければ」。その舞台が、どの地域にもある教室であり、公民館であり、グラウンドなのだ。

 少子化社会でシニア世代が担える役割は少なくない。とはいえ、閉じこもっていては始まらない。「とにかく外に出てもらわないと」と森本さん。さあ皆さん、一歩前へ踏み出しませんか。

 =おわり


=2014/04/19付 西日本新聞朝刊=

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