実は珍しくない?「幻のヘビ」…シロマダラ、全国で目撃情報

 夜行性で人目に触れることが少なく「幻のヘビ」とも称されるシロマダラ。ところが、信濃毎日新聞には発見したとの記事が相次いで掲載され、双方向報道「声のチカラ」には「撮影した」との情報が続々寄せられた。全国の地方紙にも目撃記事が相次いでいる。本当に「幻」なの? 取材を始めた。

福岡でも2回記事に

 9月8日付の信濃毎日新聞には長野県飯綱町の男性(75)が近所を散歩中に道端で見つけた―との記事が載った。これを読んだ長野市の古川福三さん(77)は、この2日前、自宅近くの畑で野菜に付いたナメクジを除去していた時に発見した―と「声のチカラ」取材班に一報。「珍しいヘビと思い、スマートフォンで撮影した」

 さらに、同市の丸山保重さん(81)は10日夜、庭先で偶然見つけ「生け捕りにした」。同市の中村晃二さん(56)も6日夜、猫が口にくわえて自宅玄関先に持ってきた。「初めて見たので驚いた」

 古川さんと丸山さん、中村さんが撮った写真は、爬虫(はちゅう)類に詳しい城山動物園(長野市)の飼育員、高田孝慈さん(48)に「同定」を依頼。いずれもシロマダラに間違いない-との回答を得た。

 そんな確認作業を繰り返していた22日、古川さんから再び取材班に連絡があった。「昨晩、シロマダラを生け捕りにできたから今度は実物を見に来てよ」。ちょうど、長野県飯田市の男性(50)が生きたまま捕獲した―との記事が信濃毎日新聞に載った日だった。

 「幻のヘビ」がこれほど目撃されていいのか―。試しに、地方紙と共同通信でつくるニュースサイト「47NEWS」で検索すると、目撃例は他県でも相次いでいた。9月には少なくとも群馬県太田市、兵庫県丹波篠山市、千葉県いすみ市、岐阜県美濃市、茨城県常陸太田市、神奈川県葉山町、大分県九重町で目撃され、それぞれの地方紙に掲載されていた。

 西日本新聞でも近年、福岡県内での発見を2回記事にしている。2017年の宗像市、20年の篠栗町での事例を紹介している。

多忙な「在野の研究者」

 シロマダラは日本の固有種で、最大でも体長60~70センチと小型。夜行性で低山地に生息し、小型のトカゲなどを食べる。長野県内では1980~90年代に北東部を中心に見つかったとの記録が残るが、宅地開発や河川改修の影響で餌が減るなど、個体数が減っている可能性もあるとされてきた。

 高田さんは「夜行性のため、目にする機会が少なかっただけかもしれない。少なくとも(複数の目撃がある)長野市内には一定程度、生息していることが推測できる」と認める。

 実は、長野県版レッドリスト(2015年)でも「(絶滅危惧かを)評価するだけの情報が不足している種」に分類されている。

 「希少種に関する情報は、いわゆる『在野の研究者』からの情報に支えられている」。県環境保全研究所(長野市)の主任研究員北野聡さん(54)は話す。水生生物が専門の北野さんは20年ほど前、希少種に関する情報不足を補う狙いで、県内の教師らとともにメーリングリストを作った。

 だが「在野の研究者」の代表的な存在である小中学校や高校の教師たちは学校業務が多忙に。フィールドワークに没頭する時間的余裕を失い、希少種の情報が集まりにくくなっているとの指摘があるという。

 シロマダラの相次ぐ発見について「環境の変化」を挙げる人も。ここ20年ほど、長野県内で南方種の昆虫が増えるなど地球温暖化などによる環境変化を実感する-と話すのは、環境省希少野生動植物種保存推進員の那須野雅好さん(61)=同県安曇野市=だ。

 那須野さんは30年前に地元で「三郷昆虫クラブ」を発足。子どもたちと虫捕り網を携え、定期的に野山へ足を運んできた。「地球規模の環境変化を知るためにも、それぞれが身近な自然に目を向けてほしい」としている。

(信濃毎日新聞・牧野容光)

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