【教育委員会は変わるか 春日市の現場から】<3>住民目線で声上げる

春日市教育委員長の段美穂子さん。委員で話し合い、教育目標をまとめた分厚い冊子を1枚のパンフレットに変更した 拡大

春日市教育委員長の段美穂子さん。委員で話し合い、教育目標をまとめた分厚い冊子を1枚のパンフレットに変更した

 教育委員長と教育長。両ポストの役割や責任は何が違い、そもそもどっちが「長」なのか。春日市教委(福岡県)の教育委員長、段美穂子さん(65)も「確かに、私たちにも分かりにくかった」と言う。

 国会で審議入りした与党の教育委員会改革案では、「責任の明確化」のため、教育長と教育委員長が新「教育長」に一元化される。段さんにとっては、自身のポストを失う形になるが、この流れには賛成だ。

 段さんは元小学校教諭。福岡市近郊の筑紫地区で勤務し、3校の校長を務め、5年前に定年退職。その年の6月から教育委員になり、翌年12月、教育委員長に互選された。

 毎月の定例会では、教委事務局と打ち合わせた上、段さんが議事進行を務める。「でも、私たちは非常勤ですからね。やはり、常勤の教育長の方が細かい情報まで、つかんでいますから」。隣席には事務局トップの教育長がいて、そ
の「立ち位置」は微妙だ。

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 教員だったころ、段さんにとって教育委員会という組織はどう映っていたのだろう。

 20、30代は、日教組の組織率が高く、段さんも組合員だった。卒業式が近づくと、教職員の君が代起立斉唱などをめぐり、教委は是正を求めてきた。「上から指導監督するところという印象が強かった。ただ、現場の教師からは、縁遠い存在だった」と言う。

 接点が深まるのは、教頭、校長になってから。学校運営をめぐる相談、予算折衝で協議の機会が増えていく。「施設や備品のちょっとした修理や購入を求めても、なかなか動かない」。だが、教育委員会に入ってみれば、その背景も見えてくる。

 教委は、教育行政の責任者であるが、教育予算の執行権限を握っているのは首長だ。各学校の教職員人事もそうだ。市立学校の教員でありながら、教員人事を決定するのは県教委。権限の分散、ねじれの構図の中で、教育行政を動かす難しさを痛感した。

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 春日市の教委改革が本格化したのは2007年ごろから。その一つが、研究指定校制度の休止だった。

 多くの自治体では毎年、教育テーマを決め、研究指定を受けた学校が授業実践を公開。教育委員たちは、来賓として招かれ、現場を視察する。ただ、学校側の準備は大変で、授業研究という本来の目的がかすみ、「関係者向けのセレモニー」に陥っていた。慣例や形式にとらわれず、学校現場、子どもの目線に立った改革として休止された。

 そんな流れの中、シナリオに沿った教委定例会に加え、懇談会の新設を提案したのが段さん。「せっかく協議の場があるのだから、もう少し、いいものにしていこう」。結論を急がず、委員たちの議論プロセスの中にこそ、教育行政のヒントはあり、生かしてもらいたい、と考えた。

 ある日の懇談会では、こんなことがあった。春日市では、学級崩壊予防のため、複数教員で学級運営、指導に当たる「サポート・ティーチャー」制度を導入している。ところが、当初見込みを上回る派遣要請が学校からあり、1学期でほぼ年間予算を使い切った。市側は財政事情もあり、2学期からの打ち切りを打診したが、懇談会協議で押し戻し、予算をやりくり、継続につながった。

 段さんは「制度がどう変わろうとも、元教員として、住民として、母親として、納得できないことは、納得できないと、私なりに主張していきたい」と話した。


=2014/04/22付 西日本新聞朝刊=

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