「“弁当の日”実践日本一」目指す福岡県 子どもに台所に立つ機会を 体験積み生きる力に

宮崎大であった「サミット」。実践者たちが少人数に分かれて「弁当の日」の課題について話し合った 拡大

宮崎大であった「サミット」。実践者たちが少人数に分かれて「弁当の日」の課題について話し合った

 (1)子どもだけで作る(2)小学校5、6年生のみ(3)月1回、年5回-。この三つの決まりの下、2001年に香川県の滝宮小学校で始まった「弁当の日」。全国的に広まりを見せる中、福岡県が今年3月、新年度から今後3年間で「子どもが作る“弁当の日”実践日本一」を目指すと宣言した。「日本一」の意味するところとは?

 「弁当の日」は当初、局地的な取り組みにとどまっていたが、06年に福岡県で火がついて以降、全国に広がった。提唱者の竹下和男・元滝宮小校長(65)の集計によると、実践校は1376校(今年4月16日現在)。トップは宮崎県(400校)で、福岡県(121校)、岐阜県(111校)と続く。

 宮崎県は県教育委員会の力が大きい。当初は市民有志の呼びかけで草の根的に進み、その趣旨に県教育長が賛同した。10年から何度も竹下さんを招き、県内各地区で教職員を対象にした講演会を開くなど、トップダウンで拡大した。

 一方、ボトムアップで広がったのが岐阜県だ。県PTAの総会で「弁当の日」の効果を知ったPTAが、各地区で競うようにして学校を動かした。

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 実践校が増えるのはいいことだが、「弁当の日」の取材を続けてきた私には、トップダウンに抵抗があった。教員は否が応でもやらねばならなくなる。

 子どもが満面の笑みで自作の弁当を広げる教室がある一方、暗い表情で弁当を食べる教室はたいてい教員にやる気がない。やりたくない大人は、やれない理由ばかり考える。だから大人たちが趣旨を理解しないままの実践は、子どもにとって逆効果になるし、継続しないと思っていたのだ。

 それが今年2月、宮崎大であった「弁当の日サミット」に参加して変化した。課題を小グループで話し合う中で聞いた、宮崎県内で実践しているという高校教諭の言葉がきっかけだった。

 「生徒は既に中学で経験しており、抵抗はないから、弁当は自分で作ってきます。ただ、何でやるかは分かっていないようなんです」

 子どもが分かっていないということは、指導する大人も分かっていないのかもしれない。とはいえ「弁当の日」の本格導入から4年、周囲にどんな考えを持つ人がいようと、宮崎県では台所に立つ機会を与えることで、包丁を握った経験を持つ子どもが毎年毎年、着実に積み上がっている。

 今は分からなくても、1人暮らしをしたり、子育てをしたりするようになれば、それは大きな武器になるはず。生きる力とは体験の蓄積にほかならないからである。

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 今月16日付生活面の寄稿「食卓は語る2」で筆者の岩村暢子さんが、情報は入手できても技術は経験を積まないと身に付かない、と指摘していた。まして弁当作りの大変さ、親への感謝、食材の作り手への思い、健康への意識、誰かと食べる楽しみなど「技術の向こう側」にあるものは、体験なしにはなかなか見えるものではない。

 福岡県は6月29日、福岡市立舞鶴小・中学校に実践者たちを招き「弁当の日」への理解を深めるためのシンポジウムを開くことにしている。これを契機に、今後3年計画でさまざまな事業を展開していくという。

 どうやって広げ、深めていくか。台所に立つ子どもの姿が当たり前になるべく「日本一」の議論をしてほしいと願う。


=2014/04/23付 西日本新聞朝刊=

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