【近衛家の国宝 私の名品】<4完>御堂関白記(国宝、世界記憶遺産・1009年) 道長の存在そばに

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女優檀ふみさん

人間・道長が垣間見える「御堂関白記」

 ●女優 檀ふみさん 
 とにもかくにも「御堂関白記」である。「この世をば我(わ)が世とぞ思ふ…」と詠(うた)った藤原道長。娘たちを出世の道具に使ったこの人を、正直言って私はあまり好きではなかった。というより、実在の人物のような気がしていなかった。

 ところがどうだろう。「御堂関白記」を前にすると、道長の存在がすぐそばに感じられるのである。私たちと同じように、笑い、泣き、案じ、祈った人。はやる心に墨継ぎももどかしく書き綴(つづ)った日。思いがあふれて、書くところが足りず、紙の裏まで言葉で満たした日。千年も前の日常が、まさしく墨痕も鮮やかに立ち上がってくる。

 道長の存在だけではなく、その後ろに、同じ宮中に生きた紫式部や清少納言まで感じられて、しばし陶然としてしまった。

 世が世なら、私たち庶民が拝むことなど到底かなわなかったお宝である。それより何より、どこで焼けても失われても不思議ではなかったこの千年、歴代の近衞家の人々が必死で守り続けて、今、私たちの前にある。この奇跡を一目見ずしてどうしよう。 =おわり

 ▼近衛家の国宝 京都・陽明文庫展 6月8日まで、太宰府市の九州国立博物館。一般1500円、高校・大学生千円、小・中学生600円。月曜休館。5月5日は開館。NTTハローダイヤル=050(5542)8600。


=2014/04/26付 西日本新聞朝刊=

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