【教育委員会は変わるか 春日市の現場から】<4>職員人事が下支えに

学校教育課長に着任した渡辺厚子さん(右)。会議から戻ると決裁書類がたまっている 拡大

学校教育課長に着任した渡辺厚子さん(右)。会議から戻ると決裁書類がたまっている

 順当あれば、サプライズあり。春日市教育委員会(福岡県)でも1日付春の異動があった。職員76人のうち、課長級3人、係長級2人を含む計12人が異動した。

 異動規模は例年並みだったが、教委事務局の実務を取り仕切る学校教育課長の異動は、当人たちにとっても、周囲から見ても「サプライズ」だったようだ。

 学校教育課長に着任したのは渡辺厚子さん(53)。前職は健康課長だった。障害者福祉に長く関わってきたが、教委勤務は初めて。内示を受けると、思わず「えっ」となった。

 とはいえ、新学期が始まる4月、業務は容赦なく押し寄せる。児童生徒の転入出に伴う学級編成はどうするか、経済的に困窮する家庭を支援する就学援助手続きは進んでいるか、はたまた学校給食の献立決めまで…。「知らないことばかりで、用語の確認から始めている」(渡辺さん)。2時間程度の会議が、多い日は3回。机に戻ると、決裁書類がたまっている。

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 国保年金課長に転任した前任の神田芳樹さん(53)にとっても、今回の異動はサプライズだった。

 春日市の異動サイクルは5年前後が基本。渡辺さんと同じように3年前、初めて教委に課長として着任した。自分なりのペースをつかみ、いくつかの施策に道筋をつけようとしていた時期で、内示を受けると、同じように「えっ」。かつて、国保年金課に14年勤務したこともあり、専門性を考慮した人事であることも分かるが、「後ろ髪を引かれる思いだった」。

 神田さんが、渡辺さんへの引き継ぎメモの筆頭に挙げたは、市教育支援センターの運営に関することだった。センターは、不登校の子どもたちを支援する目的で設立された。ただ、学校現場では不登校ばかりではなく、注意欠陥多動性障害(ADHD)など発達障害への支援を求める学校が増え、機能拡充を含めた将来構想を練り始めたばかりだったからだ。

 分厚いファイルを引き継いだ渡辺さんも、その思いを受け止めていた。「どんな子どもたちにも、みんな感情があり、希望がある。一緒になって考えていきたい」。「特別支援」と呼ばれる教育分野に、福祉の行政経験を生かし、彼女なりの一石を投じようとしているのかもしれない。そう考えると今度の人事、決してサプライズではない。

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 春日市教委では、教育委員たちの意見を単に聞き置くだけではなく、委員たちのバランス感覚や苦言を教育施策に反映させようとする事務局(職員組織)のスタンスが、改革を下支えしている。国会で審議中の与党改革案は、首長、教育長権限の強化など、教委組織上部の構造改革を柱にしているが、実動部隊となる教委事務局が動かなければ、改革は進まない。

 国が検討を進める教育改革案は、教委制度改革ばかりでなく、英語教育の拡充、道徳の教科化、六三三四制見直し、大学入試改革…。2010年代後半、押し寄せようとする教育改革の大波を考えれば、教委職員をどう配置し、対応能力を高めていくか、各自治体の人事戦略も問われる形になっている。

 教委改革をめぐっては、大津市のいじめ事件が一つの発端となった。いじめ防止対策推進法が昨年9月に施行され、本年度からは各学校での組織・態勢づくりが焦点となる。渡辺さんは担当課長として、市教委方針をまとめ、近く各学校に提示しなければならない。

 「子どもの命に関わる問題ですからね。まずは、学校現場を知ることから始めたい」と抱負を語った。

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 【ワードBOX】いじめ防止対策推進法

 学校でいじめがあった場合の調査が義務づけられた。予防、調査にあたるため、心理、福祉の専門家を含めた組織を各学校に設置。調査結果を、被害者側や自治体に報告するよう義務づけられている。教委は、必要な場合、児童生徒の出席停止などの対応ができるようになった。

=2014/04/29付 西日本新聞朝刊=

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