「憲法」若者と考えるには 「人権」気付くことから 立憲の意義 歴史に学ぼう

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弁護士の春田久美子さん

 憲法9条の行く末によっては、戦場に駆り出されるかもしれない若い世代が、憲法論議の輪に加わっていくには-。毎週火曜に「HKT法教育」を連載している弁護士の春田久美子さん(福岡市)に、実践を通して語ってもらった。

 「日本国憲法の世界へようこそ!」と題し、九州大の学生と留学生を対象に法教育の授業をしたことがあります。副題は「憲法の本当の意味とは?」。憲法が憲法たるゆえん、法律と決定的に違う点を明確に伝えるのが一番の目標です。

 まず憲法の英訳を配り、三大原則を英語(基本的人権=fundamental human rightsなど)を交えて解説します。憲法や人権は欧米を中心に育まれてきており、言葉の本来の意味を再確認できる良い方法です。

 そして9条や前文の「平和主義」に関し、どんな裁判が起こされ、司法がどう判断したか、時限立法や憲法解釈の整合性について解説しました=メモ参照。

 ここまでは、通訳と私の拙い英語を交えながら一方通行で話す時間が続きました。ぴんときているかな?

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 もっと身近に憲法を「感じて」もらいましょう。九州では中学男子の髪形を校則で丸刈りと定めた学校が多かったけれど、次第になくなっていったんですよ。日本の学生も含めて「信じられない」という顔。人権意識の高まりを考えれば、当然の流れでしょうね。

 盛り上がったのがアイドルの「恋愛禁止のおきて」の話題。これも憲法で保障される幸福追求権(13条)など「精神的自由」に抵触する可能性があります。

 「カンパニーの都合もあって必要なルール。経済問題を抜きに議論できない」「経済の切り口だけで考えていいのかな」…。そこへフランス人の女子留学生が「事は恋愛なのよ。心の内部。他人の規制は許されない!」。いろいろな国の学生が意見してくれました。

 もちろん日本人学生も議論の輪に入っていました。若い世代の憲法論議への関心が高まらない中で、国境を超えられる人権意識や生活に根差した共通の感覚への「気付き」こそが、若い世代の憲法論議の鍵を握る-そう思った瞬間でした。

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 最後に「立憲主義」や「硬性(rigid)憲法」の意味を話します。子どもに憲法の話をする際、最も心を配る部分。民主主義や人権は学校で習っても、立憲主義は言葉自体も含めて意外と知られていません。

 そこで問題意識を持ってもらうために「憲法は誰に向けて書かれていると思いますか。名宛て人は誰でしょう」と問い掛けます。

 答えは為政者ですね。民主主義は多数決で物事が決まりますが、多数意見が正しいとは限らない。多数決でも奪われない価値を定めたのが憲法であり、為政者の暴走を防ぐために作られた-という立憲主義の意義が、学校ではあまり教えられてこなかったようです。

 その意義を若い世代に実感してもらうには、フランス革命に始まり、日本も太平洋戦争で多大な犠牲を払った歴史をしっかり踏まえること。日本国憲法は歴史の上に成り立っているわけですから。とりわけ近現代史はもっと時間をかけて丁寧に教えるべきでしょう。

 私たちの日々の暮らしが壊されないよう、最後の歯止めをかける仕組みが立憲主義であり、憲法なのだということを、今後も法教育を通して伝えていきたいですね。(弁護士=福岡市)

 ●メモ

 駐留軍や日米安保条約が憲法9条に違反しないか争われた砂川事件で、最高裁は条約が高度の政治性を有し、司法審査になじまないという「統治行為論」を採用(1959年)。自衛隊の違憲性が問われた長沼事件も、統治行為ゆえ司法審査の範囲外とした(82年)。民間人が自衛隊法違反に問われた恵庭事件では、自衛隊への初の憲法判断が下されるか注目されたが「判断する必要がない」と回避(67年)。

 自衛隊の海外出動については、国連平和維持活動(PKO)協力法が92年に成立。2001年の米中枢同時テロ以降、テロ対策特別措置法、イラク復興支援特措法が時限立法で制定。いずれも合憲性をめぐる裁判が起こされている。


=2014/05/03付 西日本新聞朝刊=

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