男の改姓 戸惑いと 家を継ぐ意義

お寺にまとめてもらった家系図。男子の名が連なる 拡大

お寺にまとめてもらった家系図。男子の名が連なる

 ■新訳男女 語り合おう■ 
 多くの女性にとっては結婚とほぼイコールの改姓。逆に経験する男性は少ない。自分(50)の経験を基に、男の改姓を考えた。

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 初代は享保(1716~36年)の飢饉(ききん)で亡くなり、2代、3代が試練に耐えて家の基盤を築いたという。妻の実家の家系図。菩提寺に伝わる文書などを基に先代住職が二十数年前にまとめてくれた。添えられた手紙にあった説明である。

 今春、姓を妻の旧姓に変えた。義父の親戚に姓を継ぐ男子がおらず、このままでは途絶える。それを避けるため義父の養子となり、家族で改姓した。長男長女の高校、中学の入学というタイミングもあった。

 妻から最初に相談を受けたのは10年以上前。「父は何も言わないけれど、自分の代で絶えるのはつらいはず」。子どものころ、親戚が集まると、いとこは女の子ばかり。義父は長男、その長女ということから「どうしたらいいかねえ」と聞かされ、いつも心の隅に抱えてきたという。

 半世紀付き合ってきた姓との決別である。旧知の先輩に相談すると「家を離れると考えず、家系のウイングが広がると捉えれば」。妻の言葉やそんなアドバイスに背中を押された。

 周囲の反応は、父をはじめ「私が家を離れる」との印象が前提だった。「寂しいことをしたなあ」と叔父は電話越しにつぶやいた。「何も変わらんよ」。そう言ったものの「墓はどうするのか」と尋ねられ、「兄弟でこれから相談する」と言うしかなかった。

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 改姓後、会社から届いた検診案内の宛名は新しい姓に。初めて違う姓になっているのを見て、1文字ずつなぞるように目で追った。

 名義変更の手続きも戸惑った。印鑑作製に始まり、運転免許証、銀行口座、各種保険…。書類に元の姓を書き込んでは訂正した。飲み仲間となっている息子のお父さんたちと名前を呼ばれる練習をするなど慣れるのに必死だ。仕事上はこれまで通りだからそれほど大変でもなかろうと踏んでいたが、とんでもな
かった。

 結婚後は「夫又(また)は妻の氏を称する」のが民法の規定だが、女性が9割方、変更を迫られているのが現状。認識不足だったことを言い訳のしようもないが、姓が変わる問題の大きさを突きつけられた。

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 そうまでして姓を守ろうとするのはなぜか。かつては家を継げば、土地などの財産を先祖の恩恵として継承することになったかもしれない。ただ、核家族化や都市化が進み、その意味は薄れているのではないか。

 「供養とは『供に養う』と書きます。先祖をしのびつつ、自身の生き方を学ぶ機会になればいいのではないでしょうか」。先日の法要で住職が語ってくれた。姓と家を受け継ぎ祖先を供養することで誇りと責任感を持ち、自身を律することになれば意味がある。

 家系図には義父までの10代が記載される。先代住職によると、4代、5代は辛抱強く産を成したものの6代は遊興で持ち崩し、7代が復興させたそうである。

 社会的、文化的につくられてきた男女のありようを考えるジェンダー論的にいえば、家系の継承も男性だけでなく女性が担ってもいい。11代目に妻の名を記せば、後生の子孫は「初めておばあちゃんが家を継いだんだ」などと眺めてくれるだろうか。

 ●夫婦別姓、賛否は拮抗

 夫婦別姓制度について国の2012年の世論調査では、選択制を導入しても構わないと答えた人は35・5%、現行制度を改める必要がないという人は36・4%で、賛否は拮抗(きっこう)している。

 お隣の韓国は夫婦別姓。子は夫の姓になる。知人の韓国人によると、たいていの子が幼いころ、親に疑問をぶつけるが「姓の違う母子の愛情が薄いということはない」という。家門を守るのは男性で、いなければ養子を迎える。族譜には養子と表記されるという。


=2014/05/10付 西日本新聞朝刊=

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