【こんにちは!あかちゃん 第17部】おなかの命は… 中絶を考える<6完>正しい避妊 男性も当事者

出産後の家族計画や中絶経験者の避妊指導にも力を入れる大隈レディースクリニックの大隈良成さん 拡大

出産後の家族計画や中絶経験者の避妊指導にも力を入れる大隈レディースクリニックの大隈良成さん

 年間19万件を超える中絶。社会が変われば産み育てられる命もあるのではないか-そんな思いの一方で「望まない妊娠をしない」ということも忘れてはならない。最終回で考えたい。

 「九州は中絶が多い」。この連載の取材を通して足を運ぶ先々で聞いた。本当に地域差があるのか、調べてみると-。

【中絶を考える】「産んでどうするの」誰からも歓迎されない命

 《厚生労働省の中絶に関する調査(2012年度)によると、九州各県の人工妊娠中絶の実施率(15~49歳の女性千人当たりの件数)は全国平均を上回る=グラフ参照。10件以上は全国で6県、うち4県が九州だ》

 なぜだろう。大隈レディースクリニック(佐賀県江北町)の大隈良成さん(59)も不思議に思っていたそうだ。そこで4年前、各地の産婦人科医の協力を得て約1500人の患者に避妊に関するアンケートを実施した。回答の中から九州3県(佐賀、長崎、大分)と、実施率が低い4県(千葉、愛知、神奈川、茨城)を取り出して分析すると「なぜ」の答えが見えてきたという。

 まずは避妊の知識不足。

 《「あなたの避妊法は?」の問いに、九州3県では26%の女性が医学的な避妊とはいえない「膣(ちつ)外射精」を選んだ。実施率の低い4県では19%だった》

 大隈さんが日々の診療に当たる中でも「避妊したけど妊娠した」と訴える女性の多くが、避妊の方法に「膣外射精」を挙げる。30~40代にも多いそうだ。コンドームの正しい使い方を知らないケースもあり、大隈さんは「ピル(経口避妊薬)の服用など女性主導の避妊を検討するのも一つの方法」と話す。

 男女間の意思決定のあり方にも差があった。

 《「妊娠したくないときに避妊しないでパートナーが性交渉を求めたらどうするか」の質問に「断る」と答えたのは、実施率の低い4県が71%。九州3県は60%で11ポイント低かった》

 避妊なしの性交渉を断れないというのは「男に従う女」といった男性優位の構図もうかがえる。大隈さんは「中絶が女性の体に及ぼす影響は大きい。知識以前の思いやりも必要」と指摘する。

 確かに妊娠で体に負担を受けるのは女性だ。しかし、男性もまた妊娠や中絶の当事者であることは言うまでもない。思いがけない妊娠に悩む女性の中には、相手の男性から「中絶をすれば」と簡単に言われて傷ついたという人もいた。

 中高生の性教育に取り組む松隈産婦人科クリニック(福岡県小郡市)の松隈孝則さん(65)はこう話す。「男子生徒は妊娠初期の胎児を血の塊や卵のように勘違いしている場合がある。それが中絶を軽く捉える無責任さにつながっていくのでは」

 高校生に動く胎児の超音波検査の映像を見せると「もう命なんだ」「妊娠には責任がいる」といった感想が聞かれるという。性教育で正しい知識を得ることは当事者意識を育てる一助になりそうだ。

 正しい避妊と男性の当事者意識-。それらもまた、おなかに宿った命を心から喜び、安心して産めることにきっとつながる。 =おわり


=2014/05/24付 西日本新聞朝刊=

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