【教育委員会は変わるか 春日市の現場から】<6完>市教育長に聞く 現場の視点を忘れず

政府与党の教委改革について語る山本直俊教育長 拡大

政府与党の教委改革について語る山本直俊教育長

 教育委員会制度を見直す地方教育行政法改正案=メモ1=が衆院可決され、今国会で成立する運びになった。教育行政の執行機関としての位置づけは変わらないが、首長の意向がより教育行政に反映されやすくなる。独自の教委改革に取り組む春日市教委(福岡県)は今回の改正案をどう受け止めているのか。山本直俊教育長に聞いた。

 ‐改正案をどう評価するか。

 「今回の改革論議は、大津市のいじめ自殺問題をめぐる教委対応の不手際や遅れが発端になった。教育委員長と教育長を一元化し、責任の所在を明確化するなど、危機管理の視点からは一定の評価ができる」

 「私たちが取り組む教委改革の柱は現場主義。教委という組織をより学校や地域に近づけ、現場の声に耳を傾け、課題への対応力を高めようとするものだ。その一環として、私たち教育委員が学校に出向く『出前トーク』、住民参加の学校づくり『コミュニティ・スクール』を全小中学校で導入。現場からのボトムアップ型の改革を目指している」

 「しかし、今回の案は首長と教委の関係見直しが中心で、トップダウン型の改革を進めようとしている。学校や子ども、保護者から見て、何がどう変わるのか、見えにくい」

 ‐改正案が成立すれば、首長と教委が協議する「総合教育会議」=メモ2=を全自治体が設置することになる。

 「会議設置の利点として、予算編成権を持つ首長の関与で施策を迅速に実現できる点が挙げられている。だが、現状でも教委と首長の意思疎通はできている」

 「私たちは形式、追認に陥りがちな会議の見直しを進めてきた。ざっくばらんな本音の議論を増やすことで、教育行政の実効性を高める狙いがある。ただ、首長が主宰する総合教育会議では、そうした本音の議論は難しいのではないか」

 「教育方針を定める『大綱』に、首長はかなり踏み込んだ方針も盛り込める。教委がきちんと歯止めをかけられるか、鍵を握る」

 ‐首長の関与、権限強化に伴い、教育の政治的中立=メモ3=を懸念する声が根強い。

 「中1ギャップ解消などに向け、小学6年生を対象に少人数学級を導入するか、複数担任制を導入するかで、市長と教委で見解が分かれたことがある。予算の制約もあり、最終決断するのはやはり市長だが、苦言も述べ、提案する教委でありたい。制度改革を生かすためにも、教委事務局(職員組織)の力量や意識も問われる」 =おわり

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 ●〈メモ1〉地方教育行政法改正案のポイント

 一、自治体首長と教育委員会メンバーで構成する「総合教育会議」を全自治体に新設。首長は会議での協議を踏まえ、教育行政の指針となる「大綱」を策定。

 一、教育長と教育委員長を統合した新「教育長」ポストを設置。任期は3年で首長が直接任命・罷免。

 一、教育委員会は教育行政に最終責任を持つ「執行機関」の位置付けを維持。教科書採択や教職員人事は教育委の専権事項。

 ●〈メモ2〉総合教育会議

 首長が主宰し、首長と教育委員会で構成する。教育行政の大綱的方針を決めるほか、学校の統廃合やいじめなどへの緊急対応が主な議題。教科書採択や教職員人事は対象外としている。原則公開で有識者を加えることができる。

 ●〈メモ3〉教育の政治的中立

 教育委員会制度は、首長に教育行政の直接的な決定権を持たせず、教委の専権事項にして合議で決める。首長が政治的意図を持って教育内容や人事に介入することを防ぎ、市民の多様な意見を反映させる目的がある。

(共同)


=2014/05/27付 西日本新聞朝刊=

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