【働くカタチ】配偶者控除見直しを考える<中>多様な働き方認めて

レジ業務ではパート従業員が大きな戦力となっている 拡大

レジ業務ではパート従業員が大きな戦力となっている

 配偶者控除の見直しを進める安倍晋三首相の狙いの一つは「女性の就労拡大」。当事者や雇用現場の期待感はどうだろう。

 「問題は『103万円の壁』ではなく、小さな子どもがいても働ける環境があるかどうか」。福岡市の専業主婦(37)は、子育て世代の声をこう代弁する。2人目の子が保育所に入るめどが立ち、年内の再就職を考えている。「パートは十分に稼げないから」と控除の対象外でも正社員として働くつもりだ。

 厚生労働省の実態調査(2011年)では、働く時間をあえて短くするなど「就業調整をしている」というパート従業員は約16%だった。この主婦は「働きたくても育児や介護で103万円を超えられない人もいる。控除がなくなると税負担で困る人の方が多いのでは」と予想する。

 福岡県筑紫野市の女性(44)は両親を在宅介護するため、1年半前に正規雇用の事務職を辞めた。預金を切り崩しながら生活している。「長時間預けられる施設があれば働ける」とも思うが、急に入院することもあり、先が見通せない。「国は在宅介護を進めている。働ける環境が整わないのに介護して仕事もしてって、矛盾していませんか」

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 雇用する側は、就労拡大効果をどう見ているのか。

 食品スーパーの西鉄ストア(筑紫野市)では、パート従業員約2600人のうち約2千人が103万円の枠内で働いている。総務部長の田辺昇二さんは「控除を廃止しても『130万円の壁』がある。扶養手当の問題もあり、勤務時間を大幅に増やす従業員は限られるのでは」と見込む。

 年収が130万円以上になると扶養から外れ、社会保険料を払うことになる。「年金は25年間納めないと受給できず、50代が負担を増やしてまで働くとは思えない。保険料を折半する企業も負担が増える」。また、田辺さんの言う「扶養手当の問題」とは、一定収入を超えると夫の手当がなくなること。多くの企業が月額で数千~数万円を支給しており、家計に与える影響は大きい。

 一方で、九州北部税理士会調査研究部長の末吉幹久さんは雇用の縮小を警戒する。「1人あたりの給与が増えれば、雇える人数は減る。パートと企業の需給バランスが崩れることになる」と指摘している。

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 画一的な就労拡大に疑問を投げ掛ける声もある。福岡市のパート事務員の女性(39)は「仕事をセーブしたい人も働き続けられる環境」を求めている。

 昨年までは団体職員だった。仕事が終わるのが午後8~11時ごろで、簡単な夕食で済ませる日々。夫の転勤を機に働く時間を減らし、仕事と家庭のバランスが取れた生活に満足している。「男女問わずいろいろな働き方を認める職場環境になれば、働く女性は増えると思う」。そのために問われるのは、税・社会保障制度のあり方に加えて「意識」なのかもしれない。

 税理士事務所を営む末吉さんは、結婚や出産後の復職を促しても「夫が認めてくれない」と拒む女性を何人も見てきた。「就労拡大のため真に必要なのは『女性が家庭を守る』という社会意識を変えることではないでしょうか」


=2014/05/29付 西日本新聞朝刊=

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