ゲイカップルとダウン症児の絆描く 映画「チョコレートドーナツ」 トラビス・ファイン監督に聞く 家族とは「血」でなく「愛」 愛し合う権利 誰にもある

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作品に込めた思いについて語るトラビス・ファイン監督

 ■新訳男女 語り合おう■ 
 ミニシアター作品として記録的なヒットとなっている米映画「チョコレートドーナツ」。1970年代に起きた実際の出来事を基に、母親から育児放棄されたダウン症の少年と一緒に暮らすため、法や偏見と闘うゲイカップルの姿を描いている。来日したトラビス・ファイン監督(45)に作品に込めた思いを聞いた。

 《ルディは歌手を夢見ながら、ダンサーとして日銭を稼ぐ日々。ある日、ゲイを隠して生きてきた弁護士と恋に落ちる。ルディのアパートの隣には、ダウン症のマルコが住んでいた。母親は薬物所持で逮捕。残されたマルコを2人で育て始める。幸せな生活もつかの間、ゲイだと周囲に知られると、家族に差別や偏見が襲いかかり…》

 ‐映画化の経緯は。

 「元のシナリオは80年代初期、実在のルディ、マルコ、母親のモデルから着想を得て書かれたもの。最初に読んだとき、全く共通点がなく、とても一緒になりそうにない人たちが家族をつくるところに引かれた。家族が血縁からできているのではなく、時には愛から生まれることもあると」

 ‐主演にアラン・カミングさんを起用した理由は。

 「才能のある俳優だったから。それに自身がゲイであることを公言し、多様な性の当事者の権利や平等に関する活動にも貢献している。役をただ演じるだけでなく、そういう側面を持つからこそ起用した。実際に演じて自身の経験と重なるところもあったようで『素晴らしい作品になった。誇らしい』と話していた」

 ‐家族って何だろうと考えさせられる作品。

 「人は結婚して家族になるのだとすれば、それは血縁ではない。相手と一緒になるのは、何かお互いにつながり合えて、通じ合えて、恋に落ち、愛が生まれるから。人と人の間のつながりは何かリアルで、形のあるもので、人間的なもので、人生が詰まっている。だから家族を定義するのは血ではなく愛なんだと思う」

 ‐舞台は70年代。なぜ現代を舞台に描かなかった?

 「70年代の映画が大好きだから。同時に、この間の米国を振り返り、これだけの変化があった、こんなに変化していない、そんな部分が見つめ直せるんじゃないかという気持ちもあった」

 ‐70年代と現代では、多様な性の人たちを取り巻く環境は大きく変化した。

 「今では米国の多くの州が同性婚や同性カップルによる養子縁組を法的に認めている。映画のエグゼクティブプロデューサーを務めた男性2人は20年来のカップルで、33人の子を育てている。フロリダ州で養子縁組を禁じる法令を憲法違反として訴訟を起こし、養育権を勝ち取った」

 ‐そういう意味では、日本は理解が進んでいない。

 「全ての人間が愛し合う権利がある。その愛は性別、肌の色、国籍を超えるもの。全ての愛に共通しているのは、そこに真実の愛があるということだけ。同性愛者として生まれてきたのであれば、当然その形の愛を通して愛し愛されることが許されるべきだ」

   ■    ■

 映画は福岡市のKBCシネマなどで公開中。6月下旬から九州各地のミニシアターでも上映予定。次回6月7日付では、多様な性の家族を取り巻く日本の現状を考えます。


=2014/05/31付 西日本新聞朝刊=

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