【HKT(HARUTA KUMIKO TEACHER)法教育】春田久美子さん 連載を終えて 「生き抜く力」育てたい

法教育に取り組む春田久美子さん。子どもたちに弁護士バッジの模型を見せ、そこに込められた意味を紹介している 拡大

法教育に取り組む春田久美子さん。子どもたちに弁護士バッジの模型を見せ、そこに込められた意味を紹介している

 子どもたちに「法」について考えてもらう取り組みを紹介した連載「HKT法教育」が5月で終了した(毎週火曜、全21回)。担当した福岡市の弁護士、春田久美子さん(47)に、あらためて法教育の意義と今後の活動について聞いた。

 ‐そもそもなぜ、子どもたちに法教育が必要なのでしょう。

 「法って身近に感じないかもしれませんが、友達同士のけんかから外交問題まで、あらゆる問題を解決するのに必要なのが『法的なものの見方』だからです」

 ‐その見方とは?

 「ぶつかり合った権利関係を調整するためのツール(道具)が法律です。そして司法は、トラブルが起きたときに白黒付けたり、折り合いを付けたりして解決するプロセス。自分が大切にしたいものを守り、相手の立場も尊重しながら着地点を見つけていく作業はコミュニケーション力を磨く訓練であり、社会で生き抜く力を育ててくれます」

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 ‐子どもたちはどんな反応をするのですか。

 「授業では『なぜ小学生が携帯電話を持ってはいけないの』『なぜ野良猫に餌をあげたら駄目なの』といった身近なテーマについて意見を出し合います。子どもたちが驚くのは、仲良しの友達が思いがけない意見を言ったり、同じ肯定派でも理由が違ったりすること。他者の存在に気づいて、『どうして違うんだろう』と思考し始めます」

 ‐みんなが納得できる結論は出ますか。

 「子どもたちは普段、正しい答えを見つけることや暗記することに慣れています。法教育は結論が出なくてもいい授業。裁判所でさえ一審と二審で逆転することもあり、見方によって白黒両方あり得るのが世の中です。そう気づくだけでも意味があります」

 「社会にはたくさんのルールがあるけれど、『本当に正しいと思う?』と揺さぶりをかけてみる。その先に思考があるのだと思います。大人も同じ。何も疑わずに受け入れるだけでは、世の中はいつか壊れてしまいます」

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 ‐これからはどのように法教育に取り組んでいきますか。

 「民話や絵本を題材にした法教育を考えています。さまざまな人種が暮らすフランスでは、小さいころから『自由とは何か』といったテーマの絵本を読んで刺激を受けています。日本の子どもたちも親しみを感じながら学べるよう、地域に伝わる民話を掘り起こして活用したいですね」

 「法教育はグローバル人材の育成につながります。問題に気づき、多角的に思考して自分の意見を表現する。さらに相手と交渉、説得する訓練は、英語を勉強する以上に大切なこと。教室や家庭から世界にはばたくような法教育を目指します!」

 ▼はるた・くみこ 九州大学法学部を卒業後、団体職員を経て裁判官に。10年間務めた後、2006年から弁護士に転身。福岡県弁護士会の法教育委員会委員長。

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 【ワードBOX】法教育

 法や司法制度についての基本的な知識、根底にある考え方やものの見方を学ぶ。裁判員制度で市民の司法参加が進んでいることなどを背景に、小中高校では学習指導要領に基づき、2011年度から順次実施。社会科や特別活動などで取り入れている。春田久美子さん所属の福岡県弁護士会が「法教育センター」を設けて弁護士による出前授業を行うなど、法曹界も取り組んでいる。


=2014/06/03付 西日本新聞朝刊=

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