福岡市 人工島・野鳥公園計画 市民参画に一定の評価 具体的な実現課題

参加者が思い思いに描いた野鳥公園のイメージが掲示された「ラウンジカフェ」 拡大

参加者が思い思いに描いた野鳥公園のイメージが掲示された「ラウンジカフェ」

 福岡市が東区のアイランドシティ(人工島)に計画している野鳥公園の考え方や活動プランを示した基本計画が3月、まとまった。策定には住民、野鳥の愛好家、まちづくりの研究者ら多様な市民が関わり、幅広い意見を取り入れる方式が取られた。参加者からは「市の姿勢を転換した画期的な試み」と評価する声が聞かれた一方、「具体案を盛り込む当初の目標は頓挫した」との指摘もあり、行政の環境施策について考える事例として行方を見守りたい。

 野鳥公園は、博多湾東部の和白沖を埋め立てた人工島(401ヘクタール)の北側護岸沿い約12ヘクタールに整備する。対岸には国内有数の渡り鳥の飛来地・和白干潟があり、市は周辺の海、海岸を含む一帯約550ヘクタールを自然と人の共生を目指す「エコパークゾーン」としている。

 基本計画は「野鳥公園ラウンジカフェ」と銘打った市民の語り合いの場で作成した。「知識や知恵は人々が自由に会話し、ネットワークを築けるカフェのような空間でこそ生まれる」との考え方に基づく「ワールドカフェ」方式に倣った。2012年11月から13年12月の全8回を開き、延べ321人が参加した。

 策定された基本コンセプトは、人と自然が長年にわたって共に成長を続ける「成長する野鳥公園」。公園は人によって育てられ、人を育てる。人と人とをつなぎ新たなコミュニティーを育み、人工島の魅力あるまちづくりにも展開させる-とした。市民と共働で管理運営する仕組みや、持続可能な公園とするため収益を生む経済性の視点も加えた。

 これらはイメージスケッチと物語で描いた「ストーリーボード」にまとめられ、読む人が想像しやすくなっている。本年度中に策定する整備計画に生かすという。

 ■多様な意見集約

 コンセプトに多様な意見を反映できたかについては、多くの参加者が一様に評価した。3回目以降の全てに加わった会社員(55)は「まちづくりの専門家、野鳥好きのお年寄りなどいろんな目線の意見を盛り込めたのでは」と話す。単身赴任中で、自宅のある横浜市の住民と行政が一緒になったまちづくりを経験。「みんなで時間を掛けてつくりあげる街」の大切さをカフェでも訴えたという。

 具体的な計画案づくりを期待していた参加者にとっては落胆が大きい。「各回の積み重ねがなく、結局はイメージを示しただけで終わった」と言うのは、人工島計画が持ち上がった当初から野鳥公園づくりに関心を抱き、提案もしてきた市民グループ代表(60)。米国の環境保護団体や福岡大の研究グループが12年、市に具体案を提出しており「カフェで生かすことはできなかったのか」と惜しむ。

 ただ、市民参加の手法は評価しており「カフェは公園に対する思いを持った人たちの集まり。これを生かしてほしい」とフォローアップを注文する。

 ■イメージ向上も

 「開発」と「保全」が衝突しがちな環境の分野は行政が苦労するケースが多いが、カフェはそうした事業を進める良い前例になったのは確かだ。

 公共事業を研究する大学教員(36)は1回を除いて参加した。「野鳥公園は、用地分譲などで苦戦する人工島のイメージアップにつながる可能性もある」と予測。市民参加によって「これまでの閉鎖的な人工島事業とは根本的に違う計画にはなった」と話す。ただ「担当部局が環境局から港湾局に変わった。基本計画の一部をつまみ食いして整備計画を作るようなことは避けてほしい」とくぎを刺す。

 住民ら多様な組織が整備に関わった福岡市・天神の警固公園をデザインした福岡大工学部社会デザイン工学科の柴田久教授は「これまで示された外部案などの成果と、今回の基本計画をどう生かし、実現するのかが課題となる」と指摘する。「成長する野鳥公園」の真価を見極めるため、今後も市民が事業に関わり目を光らせる必要がある。


=2014/06/04付 西日本新聞朝刊=

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