認知症早期発見 医療・介護者タッグ 熊本でモデル事業 集中支援し進行を緩和

「軽度認知障害」と診断された女性(左)宅を訪れた認知症初期集中支援チームの松浦篤子さん(左から2人目)と井上靖子さん(同3人目) 拡大

「軽度認知障害」と診断された女性(左)宅を訪れた認知症初期集中支援チームの松浦篤子さん(左から2人目)と井上靖子さん(同3人目)

 認知症高齢者は全国に約439万人、その予備軍の「軽度認知障害(MCI)」の人は約380万人とされる。増え続ける認知症高齢者を早い段階で発見して支援することで、症状進行を遅らせ、自宅で暮らし続けてもらう試みが進んでいる。医療と介護の複数の専門職でつくる「認知症初期集中支援チーム」。昨年からモデル事業に取り組んできた熊本県荒尾市の支援チームを取材した。

 荒尾市の女性(73)は昨秋ごろから、物忘れが激しくなった。料理は得意だったのに献立が浮かばず、料理しないで食材を腐らせることが増えた。バイクに家の鍵を差し込んでエンジンが掛からず「バイクが壊された」と警察を呼んだこともあった。

 夫(75)は「年なのかな」と軽く考えていた。福岡県に住む長女(42)が「笑顔がなくなった」と異変に気付き、脳神経外科を受診して「MCI」と診断された。すぐに地域包括支援センターに相談し、初期集中支援チームにつながった。

 年明けには、チームメンバーで「荒尾こころの郷病院」作業療法士の松浦篤子さん(44)と、市地域包括支援センターの精神保健福祉士井上靖子さん(47)が自宅を訪問。記憶障害の程度や生活状況などを把握した上で「介護保険サービスを受けずに在宅生活が可能」と判断した。

 夫婦に認知症への理解を促し、夫に(1)妻をなるべく外に連れ出す(2)料理の献立を具体的に助言して調理をさせる(3)服薬管理をする-などの助言をした。松浦さんたちは4月まで自宅を4回訪れ、経過を見守った。夫婦は2人で温泉や花見などに出掛けることが増え、女性の表情は見違えて明るくなった。

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 初期集中支援チームは、厚生労働省が2013年度に荒尾市など全国14カ所でモデル事業をスタート。14年度は全国100カ所程度に拡大し、15年度以降は全国の自治体に設置する方針だ。

 看護師や介護福祉士などの専門職2人以上と認知症専門医を含む3人以上で構成する。医療と介護が連携して、初期の認知症や医療・介護サービスを受けていない人などを対象に、6カ月を目安に集中的に支援していく。

 荒尾市のチームは、認知症疾患医療センターに指定されている「荒尾こころの郷病院」などの10人で運営している。昨年8月から今年3月の8カ月間で39人を支援した結果、在宅生活を継続した例が95%、介護保険サービスにつないだ例が36%に上った。半面、本人や家族が支援を拒否して状況が改善しないケースもあった。

 松浦さんは「早期に関われば関わるほど、認知症の人の意思を尊重でき、自立期間も長くなる」と初期集中支援の意義を強調する。

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 最大の課題は、MCIや初期の認知症の人をどう把握するか。

 荒尾市の場合、支援のきっかけは民生委員とケアマネジャーがそれぞれ20%、家族と医療機関が15%ずつを占めた。家族や地域住民の「気づき」が重要となるため、市は認知症サポーター養成講座などを開き、認知症についての知識を広める活動も並行している。

 松浦さんは「専門職の連携だけでなく、公民館などに交流の場を設ける、ごみ捨てを手伝う-といった地域の協力が欠かせない。認知症への理解をいかに広げるかが、初期集中支援チームの成否の鍵を握る」と話している。


=2014/06/05付 西日本新聞朝刊=

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