ドラマ「明日、ママがいない」 施設の子は… 「実態と違う所も」「心情に共感」

 児童養護施設を舞台にした日本テレビ系ドラマ「明日、ママがいない」。1月の開始当初からあだ名や虐待シーンに批判が噴出したものの、結局、3月まで全9話が放映された。5月には放送倫理・番組向上機構が審理対象としないことを決定。いつの間にか沈静化した印象だ。終了から3カ月。実際に施設で暮らす子どもたちは、あのドラマをどう見ていたのか。あらためて聞いた。

 5月末の休日。福岡市東区にある児童養護施設「和白青松園」を訪ねた。施設長の藤田芳枝さんの案内でロッジ風の居住棟に入る。中2、高1、高3の少女3人が笑顔で迎えてくれた。

 「(主人公で子役の)芦田愛菜ちゃんがめっちゃ、かわいかった」。質問の仕方で傷つけないか、話をしてくれるか。緊張していた私を見透かすように、高3の子が明るい声で切り出してくれた。

 《ドラマでは、子どもたちが厳しい世間に立ち向かいながら幸せをつかもうとする姿が描かれた。ただ、親が育てられない子を匿名で預かる「赤ちゃんポスト」出身の主人公をポストと呼ぶなどした演出に「施設の子を傷つける」と抗議が相次いだ》

 実際に生い立ちからあだ名を付けるようなことがあるのか。高3の子によると「普通に名前で呼んでいます。互いの過去は知らないし」。藤田さんにも確認すると、入所の経緯は職員に守秘義務があり、子どもたちが互いに知らせなければ分からないという。

 虐待シーンも批判の的になった。施設長が「おまえたちはペットショップの犬と同じだ」と罵倒したり。「ない、ない」と笑いながら声をそろえる3人。中2の子は「職員さんは優しいし、居心地がいいです」。

 《厚生労働省によると、児童養護施設は全国に約600カ所あり、約3万人が暮らしている。入所理由では、1977年時点で4割を占めた親の死亡や行方不明が、2008年には1割弱に減少。一方、親からの虐待が8・2%から33・1%に増えるなど、親がいても施設に入るケースは少なくない》

 ドラマでは、子どもたちが施設から里親の元に行くのを心待ちにしているように描かれていた。

 里親と暮らしたいか尋ねたとき、複雑な表情を浮かべたのは高1の子だった。「考えたことも探したこともないので分からない」。児童福祉法で児童養護施設は原則18歳になる高校3年まで保護する。一方、親から児童相談所が保護した子が里親に預けられるのは約1割にとどまっている。

 高3の子は親の離婚で父子家庭になり、経済的理由もあって2歳から施設で暮らしてきた。欠かさず見ていたドラマについて「実態と異なる演出が多かったけど、面白かった。描かれていた子どもたちの心情に感動した」と振り返る。立ち向かうドラマの子どもたちと、高卒と同時に自立の道へ進む自分を重ねていたのかもしれない。

   ◇    ◇

 抗議の直後はスポンサーがCMを見合わせる事態に発展。番組への賛否はともかく、児童養護施設への関心が高まったのは事実だ。だが、そこで暮らす子どもの心情、頼れる大人が少ない中で独り立ちしていく実情にまで思いを至らせられただろうか。2012年度の国の調査で、施設内虐待が51件あった実態も見逃せない。今後も見守り続けたい。


=2014/06/10付 西日本新聞朝刊=

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