民生委員にタブレット 佐賀市で社会実験 情報共有「業務楽に」

タブレットで検索しながら佐賀市の福祉サービスを説明する石井智俊さん(左) 拡大

タブレットで検索しながら佐賀市の福祉サービスを説明する石井智俊さん(左)

 民生委員の業務にタブレット端末を活用する社会実験が佐賀市で進められている。紙で管理していた高齢者の個人情報や活動内容をデジタル化し、インターネットを介して一括保管する「クラウド」を利用することで、情報の共有化と業務の効率化を図るのが狙いだ。変わろうとする「地域の見守り役」の現場を訪ねた。

 「血圧はどうですか」。民生委員の石井智俊さん(72)は5月の平日、佐賀市で1人暮らしをしている77歳の女性宅を訪れた。会話の途中でも指をせわしなく動かす。手元のタブレットを操作しているのだ。

 クラウドには、女性の住所、氏名、年齢、家族構成をはじめ、持病の有無、かかりつけ医、買い物をする店などきめ細かな情報が保管されている。タブレットから接続すればその場で確認でき、月2回ほどの訪問で得られた「最新情報」を上書きすることもできる。

 検索機能も役立つ。名前を入力すれば自宅が地図上に表示され、周辺の病院などを探すことができる。がん検診など100を超える行政の福祉サービスも一覧でき、訪問先で質問されたとき、すぐに答えられるようになったという。

 社会実験は佐賀県、佐賀市、企業が参加し、今年2月にスタート。本庄地区の民生委員22人にタブレットを配備し、戸別訪問に携帯させている。通信費は月10万円かかるが、佐賀市民生委員協議会で会長を務める石井さんは「重い書類を抱えて巡回しなくてよく、業務がものすごく楽になった。普及すれば、全国の民生委員の負担が減る」と力を込める。

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 業務の軽減とともに、タブレット導入にはもう一つ狙いがある。多忙な割に無報酬のため敬遠されがちだった民生委員の担い手を確保することだ。ただ、その点では懸念もあった。民生委員の8割を、パソコンやネットになじみの薄い60歳以上が占めているからだ。

 そこで操作の習熟を図ろうと、これまでに26回の勉強会を開催。取材で訪れた日も、公民館に民生委員8人が集まり「ペンでスクロールすればよかぎ」「あらー、新幹線のごと速かね」とにぎやかに学んでいた。

 民生委員4年目の兵働正文さん(68)は「最初は扱えるか不安でしたが、みんなで楽しみながら覚えていきました。今なら孫にも教えられます」と胸を張る。社会実験に参加するNTTドコモ九州支社の入江哲史企画担当課長は「タブレット端末は高齢社会に役立つツール。これを機会にお年寄りたちになじんでもらえれば」と話す。

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 今国会に提出された医療・介護総合推進法案では、介護保険の要支援1、2の人に向けた通所・訪問介護を、2015年度から3年かけて市町村に移管。提供するサービスの種類や価格を市町村の裁量で決められるようにする。

 佐賀市福祉総務課の牛島省吾係長は「民生委員さんが持っている支援情報を共有できれば、地域で提供する介護サービスの充実にも生かせるはず」と期待を寄せる。社会実験は6月末まで続き、7月には成果が公表される予定だ。

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【ワードBOX】民生委員

 地方自治体の推薦を受け、厚生労働相から委嘱される特別職の地方公務員。地域を見守るボランティアで、高齢者の安否確認や青少年の問題行動の把握、妊婦や障害者を支援する。1人につき町村部で70~200世帯、都市部で220~400世帯を担当。交通費などを除いて報酬はなく、任期は3年。2013年12月時点で全国に22万9488人おり、支援に必要な定数の充足率は97・1%にとどまる。60歳以上が82・6%、任期を更新する再任委員が68%を占めており、新たな担い手の確保が課題となっている。


=2014/06/12付 西日本新聞朝刊=

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