子どものお絵描き どう向き合う 聖和短期大 中川香子教授

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聖和短期大中川香子教授

■心を表現 口出しせずに ありのまま 受け止めて 
 バーチャルな環境に包まれた時代だが、五感を使う活動は、子どもの心の発達に欠かせない。子どものお絵描きとどう向きあったらいいか。子どもの表現活動について研究している聖和短期大(兵庫県西宮市)教授の中川香子さんに聞いた。

 小さい子の絵は、感情や思いをストレートに表現するところに価値がある。関心のあるものや感動したことを感じたように描くお絵描きには、創造力のもとがいっぱい詰まっていることをぜひ分かってほしい。

 5歳の幼稚園児が描いた芋掘りの絵は、子どもより大きいサツマイモが画面からはみ出さんばかりだ。興奮した息遣い、「掘ったぞー」という声まで聞こえそうだ。

 子どもの絵は、1歳くらいからの「なぐり描き」がスタートだ。鉛筆などを握って遊んでいるうちに、紙などに打ち付けてできた点々が幼児の最初の表現だ。

 道具を使って対象を変化させる面白さ。点が線になり、細い線がだんだん力強くなる。線が紙いっぱいになると大満足。さらに円運動が加わると「ぐるぐる描き」に。いずれも教えられて始めるわけではない。

 ☆ ☆

 2歳後半くらいからは丸が出現し、形を表す基本ができる。3歳後半くらいからは、丸の中に目や口が描かれ、手足のような線が描き込まれる。顔と胴体が一体化したいわゆる「頭足人」という絵だ。

 丸が登場するあたりから、子どもは絵に意味づけするようになる。頭足人のころには「これはママだ」などと思いを絵に込めるようになる。

 発達度合いは子どもによって違うが、お絵描きは、子ども自身が対象に働きかけ、自分の世界をつくり出す行為だ。自ら活動することで、自分と世界の関わり方を学んでいるといってもいい。

 大好きなお母さんやお父さんが受け止めて褒めてくれれば、子どもには「自分の働きかけには力がある」と自信になる。それが人生の土台になっていく。

 時には室内の壁もキャンバスになることがある。壁が汚れるなどと嫌がらないで、子どもの手が届く高さまで紙を貼ってあげるなど一緒に楽しんでほしい。

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 子どもは、自分が思ったとおりに表現する。4歳の幼稚園児が描いたヒヤシンスの絵は、花だけ描く子、根っこだけの子とさまざまだが、自分が感動したところを強調して描くのが子どものリアリズムなのだ。

 ところが、多くの親はそんな子どもの絵の価値を知らない。「こうしたら?」などと口を挟んだり、形を教えたりして子どもの世界に平気で介入する。上手、下手という評価を外から押しつけることも多い。

 これでは、子どもが自分でああじゃない、こうじゃないと工夫しながら、最後に形にたどり着くという一番大事なプロセスがなくなってしまう。

 子どもにすれば、大人から見て立派なものよりも、少々形が変でも自分で考えて描いた方が、ずっと価値がある。自分の作品でなかったら意味がないのだ。

 親の多くが、結果的に子どもの表現力の芽を摘み取っているのは、何とももったいないことだ。

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 小学生後半くらいになると、絵を描きたくないという子が増えてくるとも聞く。これまでと違って視覚的に正確に描くことを求められたり、学校の評価などを通じて、のびのびと自分の表現ができなくなったりするからだろう。

 上目遣いにフーッとため息をついたり、じーっと考え込んだり。子どもにとって絵を描くことは、何もないところから自分でつくり上げていく創造の世界だ。

 自分で考え、表現するお絵描きには、イメージを形にする創造力のもとがいっぱい詰まっている。画用紙に向かって奮闘している小さな芸術家の思いをありのままに受け止め、励ましてほしい。

 ▼なかがわ・きょうこ 聖和短期大教授。幼児教育学。NPO法人ライフスキル研究所理事。幼稚園教諭などを経て現職。「お母さんにわかってほしい幼児期のお絵かき」など著書多数。福岡市生まれ。


=2014/07/01付 西日本新聞朝刊=

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