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九州マーケットリポート

2012/04/01

JR博多シティと九州新幹線、二つの開業を経た九州の課題

株式会社日本政策投資銀行 九州支店 企画調査課長
久間 敬介さん

 昨年3月のJR博多シティ誕生と九州新幹線の全線開業から1年を迎えた。JR博多シティの開業効果から次のステップへと踏み出した福岡都市圏の商業環境と、九州新幹線全線開業後の九州の観光動向や課題について、日本政策投資銀行(DBJ)九州支店企画調査課長の久間さんにお話を伺った。

ー JR博多シティの開業がもたらした福岡、そして九州全体への影響についてどうみていますか。

久間 JR博多シティは開業した3月の来場者が726万人、その後も一ヶ月平均400〜500万人と堅調に推移し、開業半年を迎えた9月2日には累計3,080万人に達しました。福岡市の商業環境に与えた影響について、核テナントの博多阪急を加えた福岡市の百貨店全体の売上高の伸び率でみてみると開業した3月は前年同月比17.4%増でした。それ以降も順調に推移していて、長年続いていた福岡市全体としての百貨店売上高低迷の状況が改善されたことがわかります。
 福岡市を除いた九州沖縄各県の百貨店の売上高の伸び率には開業の前後で全国平均を超えた大きな変化はみられず、懸念されていたJR博多シティ開業による周辺地域への大きなストロー効果(地方の活力が大都市に奪われてしまう現象)は今のところ出ていないとみています。
 結論を出すのは時期尚早だと思いますが、九州新幹線全線開業も後押しして、期待どおりの開業効果があったと言えるのではないでしょうか。

百貨店売上高伸び率推移(2011年1月〜9月)

ー 博多に大型商業施設が登場したことで、既存の商業地・天神との対比に注目が集まりました。

久間 福岡都市圏の人の流れにどのような変化があったのか、JR博多シティ開業前後(2010年、2011年)の福岡市営地下鉄の乗車人員の伸び率を比較してみたのですが、3月から9月まで博多駅は13〜19%増、天神駅は3〜6%増で推移していています。ここからはJR博多シティの開業によって博多を訪れる人が大幅に増えているのはもちろん、天神の人の流れにもプラスに働いていることが推測できます。
 このJR博多シティの開業が、天神と博多それぞれを利用する人の目にどう映っているのかを調べるために、昨年10月から11月にかけて福岡都市圏にお住まいの女性をメインに約千人にアンケート調査を実施しました。アンケートの結果をかいつまんでお話しますと、よく出かけるのは「天神」と答えた人が約4分の3、「博多」が4分の1の割合で、ほとんどの人が職場やお住まいに近い方、もしくは通勤や通学で利用する駅がある方を選んでいます。JR博多シティの開業によって、ふだん天神へ行っている人の博多へ行く回数が増えていますが、既存の商業集積地・天神も商業施設や飲食店の数の多さ、街歩きの楽しさで多くの女性に支持されていることがわかります。

天神駅エリアと博多駅エリアによく行く理由は何ですか?
(※複数回答可、3つまで)

両エリアともほぼ似通っているが、天神エリアは「買い物以外にも遊べる」、博多駅エリアは「そこにしかない商品がある」を選択しているのが特徴。

ー 天神と博多、訪問する層の違いから見えてくる、それぞれの街の魅力や課題についてはいかがでしょうか?

久間 天神は「買い物以外にも遊べるから行く」、博多(JR博多シティ)は「そこにしかない商品があるから行く」といった回答がそれぞれの街の個性を象徴していると思います。また、誰と一緒によく行くかを尋ねたところ、天神は「一人で行く」と答えた人が多いのに対して、博多は「ファミリーで行く」と答えた人が多かった点も違いが表れていると感じます。
 天神の魅力としては複数の百貨店や専門店があり、それをつなぐ地下街の回遊性のよさなどを挙げた人が多かった半面、ベビーカーを押して歩道を歩きにくいことや交通マナーなど環境整備の遅れを指摘する声も多かったですね。JR博多シティは屋上(つばめの杜ひろば)で遊べたり、ビル内からも駅構内の列車が見えたりと、子供たちも楽しい時間を過ごせる点が評価されている一方で、駅周辺の開発が進んでいない点や休憩場所の不足を指摘する声がありました。これらの課題を克服しながら、天神と博多それぞれの特徴や強みを伸ばしていくことが福岡都市圏全体の活気につながると期待しています。

住所エリアはどちらですか?

・両エリアともに、住所から近い場所によく行く傾向がある。
・「天神エリア」は、中央区・南区・早良区・西区が多く、「博多駅エリア」は、「博多区」「東区」に加え、「その他福岡市外近郊」が多いのが特徴。

世帯構成は?

天神エリア」は、「ご本人のみ」が最も多く、「博多駅エリア」は、「夫婦+子供」のファミリー層が多い。

ー 九州新幹線の全線開業による九州各地の動向をどう見ていますか。

久間 九州新幹線の全線開業は、九州の地域経済にとっても順調な幕開けとなりました。山陽新幹線とも結ばれたことで輸送人員は大幅に増加し、関西や中国・四国地方との交流が広がっています。
 九州の動向を県ごとにみると、新幹線の全線開業による時間短縮効果を最も受けた鹿児島では砂蒸し風呂で知られる指宿など有名な観光スポットへの効果が顕著に現れています。熊本は関西以西からの宿泊客が対前年比52.1%増と大幅に増えていますし、熊本博多間のエクセルパス(九州新幹線の定期券)の利用者の伸びからは、もはや新幹線が生活の足として利用されていることが伺えます。
 全線開業前はマイナスが懸念された長崎でも全国からの団体客や修学旅行客が増えていますし、宮崎は鹿児島中央駅から在来線への乗り換え客が増え、熊本からレンタカーで人気のパワースポット・高千穂へ向かうといった新しい観光スタイルも生まれています。今後、山陽・九州新幹線の直通列車や在来線特急列車の利用者増や、人口規模の割に少なかった中国・四国地方からの旅行客の増加が予想されることから九州は更なる観光振興が期待できると思います。

九州各県 発地別宿泊客数

ー 九州新幹線全線開業で活況を呈した観光地の課題を挙げるとすれば、どういったことでしょうか。

久間 九州新幹線全線開業による観光振興を一過性のブームにしないために、リピーターをいかに増やしていくかが鍵だと思います。停車駅がある観光地では宿泊者数が増加したものの、周辺地域には賑わいが及んでいないといった声も一部から聞かれます。ここを変えていくには、宿泊客に街歩きや体験型のイベントを提案するなど、その旅先でしか味わえない充実した時間が過ごせるよう工夫する必要があります。また、「待たせない、気くばりをする」といった観光客への親身な対応も満足度に大きな影響を与える要素です。こういった観光客と地域の人との出会いや交流が、九州全体の魅力をさらに高めていくことにつながるのではないでしょうか。

ー ありがとうございました。