【大分】高崎山に“イクメン”文化 群れ争い減→温厚に? 虐待母から子ザル守る雄も

優しい性格で、自然と子ザルを引きつけるバロン(右奥)
優しい性格で、自然と子ザルを引きつけるバロン(右奥)
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「昔ながらの雄」であるゴエモン(中央)は群れのサルを威嚇するため、距離を置かれている
「昔ながらの雄」であるゴエモン(中央)は群れのサルを威嚇するため、距離を置かれている
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 野生のニホンザルの餌付けや「サル学発祥の地」として知られる大分市の高崎山自然動物園で、育児に積極的な“イクメン”文化が広がっている。従来、群れの中で子ザルとは関わらないとされてきた雄ザルが、この10年ほどで子ザルに懐かれ、かいがいしく毛づくろいなどの世話をする姿が頻繁に見られるようになったという。「サル社会の方が、人間の先を行っているのかもしれません」と同園の担当者。高崎山で起きているサル界の異変を探った。

 「あれがイクメンのバロンです」。寄せ場でガイドを務める楽猿(らくえん)案内担当職員の菅本夕子さん(44)が指さす先には、子ザルや雌ザルに囲まれて過ごす園内最高齢の雄バロン(推定32歳)の姿があった。「雄が子ザルと仲良く身を寄せ合うなんて、私が職員に採用された20年前には考えられませんでした」

 園によると、雄は本来育児に参加しない。1度の発情期で多くの雌と恋をするためわが子との認識がないからで、子ザルと関わるのは群れの中のけんかの仲裁や、外部から攻撃されて群れを守る時などに限られるという。菅本さんは「雄が威厳を示して教育するためなのか、20年前は近づいた子ザルがかみつかれたり、投げ飛ばされたりしていた」とも話す。

 高崎山で初めてイクメンザルが確認されたのは2005年。C群の「ブルース」(当時推定27歳)というおじいちゃんザルが、母親を亡くした子ザルを抱えて寄せ場にやって来るようになった。毛づくろいしてやり、母乳をせがんで乳首を吸われても嫌がるそぶりを見せず、右の乳首が雌ザルのように伸びきってしまうなど、献身的に子育てをしていた。

 それからは、雄が子ザルを威嚇する姿は徐々に減ったという。今では多くの雄ザルが、寒い季節には子ザルと身を寄せ合って「サル団子」を作ったり、近くに来た子ザルの毛づくろいをしたりしている。16年にはバロンと並び園内最高齢のゾロメ(推定32歳)が、かつてのブルースのように母親を失った子ザルを育て、17年には現在C群のナンバー2であるマルオ(推定13歳)が、母親から虐待を受けていた子ザルをかわいがり、母親に怒っていたという。

   ◇    ◇

 楽猿案内の職員らは、雄ザルが育児に参加するようになった背景として「争いの減少による雄の立場の変化」があると推測する。

 高崎山に三つの群れがあった頃は、寄せ場の滞在時間を巡って群れ同士が衝突を繰り返していた。しかし、02年にA群が消滅。寄せ場では午前にC群、午後はB群と、すみ分けてくつろぐようになった。最近では、C群の弱体化によりB群が一日中寄せ場を独占しているが、争いは起きず平和だという。菅本さんは「体を張って戦うことがなくなったことで、雄の闘争心が以前より弱くなり、性格も温厚になったのでは」と解説する。

 ニホンザルの生態を研究する龍谷大国際学部の鈴木滋教授は「他群との関係の変化で、群れ内での雄の立場が変わるとは考えにくい」としながらも、「高崎山以外でニホンザルの雄が育児に参加している様子は観察されていない。雄が育児に積極的になっているのなら興味深い発見だ」と話している。

=2018/03/15付 西日本新聞朝刊=

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