【福岡】母亡きカンガルー、元気に1歳 若松区の動物園が人工哺育

飼育員の赤平真美さんに甘えるオオカンガルーのニモ=北九州市若松区のひびき動物ワールド
飼育員の赤平真美さんに甘えるオオカンガルーのニモ=北九州市若松区のひびき動物ワールド
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 昨秋の台風で母を亡くした「孤児カンガルー」が24日、無事に1歳の誕生日を迎えた。カンガルー専門の動物園「ひびき動物ワールド」(北九州市若松区)にいるオオカンガルーの子ども、雌のニモは、母の袋で育つ時期を飼育員のおなかで温められて成長した。同園では人工哺育で繁殖までこぎ着けた成功例はなく、母代わりの飼育員、赤平真美さん(39)は園内を元気に跳びはねるニモに目を細めている。

 今月中旬、ひびき動物ワールド。飼育員が果物や野菜を刻んだ餌を広場に置くと、約110頭のオオカンガルーが集まってきた。群れの中には大人に交じって無心に餌を食べるニモの姿があった。「かわいいね」。来園した子どもが背中をなでる。「たくさん食べて大きくなるんよ」。見守っていた飼育員の赤平さんが優しく声を掛けた。

 ニモの母親のリロは昨年10月、九州を強風域に巻き込んだ台風の通過後、園内で死んでいるのが見つかった。最速、時速70キロで走るカンガルー。台風の影響でパニックになったリロが走って何かに衝突したとみられる。死因は頸椎(けいつい)骨折。

 リロが死んだとき、ニモはまだおなかの袋の中にいた。発見した飼育員が取り出すと体温は低く、虫の息だった。まだ毛も生えず、自力で体温の維持もできない。「リロのためにも赤ちゃんだけは助ける」。急いでお湯で温め、何とか一命を取り留めた。

 赤平さんは約3週間、ニット帽にくるんで昼夜を問わずおなかで温め続けた。3時間おきのミルクも欠かせない。眠れない日が続いたが、環境の変化によってストレスを与えないため付きっきりで面倒をみた。

 カンガルーは繊細な生き物で、ストレスが原因で死ぬこともあり、人の手で育てるのは難しいとされる。赤平さんは常に身長、体重に気を配り、最も適したミルクの配合を研究。それでもストレスからか呼吸が弱まり、点滴で命をつないだこともあった。

 現在、体重約3・5キロ、体長約50センチと同じ年頃のカンガルーと遜色ない大きさになったニモだが、赤平さんの姿を見ると近寄ってくる。「まだ甘えん坊で手がかかります。それでも無事1歳を迎えてくれて、天国のリロも安心していると思います」

=2018/04/24付 西日本新聞夕刊=

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