『本のエンドロール』  安藤 祐介さん  (講談社・1782円)

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 ■印刷会社が舞台のお仕事小説

 人はなぜ働くのか。生活のためという人もいれば、夢を求めての人もいるだろう。真新しいスーツに身を包んだ若者たちが歩きだす季節。本が好きな人にぴったりの“お仕事小説”が生まれた。

 舞台は文芸書やコミックなどの書籍を扱う印刷会社。「印刷会社は本を作るメーカーだ」と情熱を燃やす中途入社間もない浦本と、「目の前の仕事を手違いなく終わらせることが大切だ」と日々の作業に徹する営業成績トップの仲井戸。2人の男性営業マンの対立を起点に、本の印刷を巡る理想と現実が描かれる。

 TBS・講談社第1回ドラマ原作大賞を受賞した2007年のデビュー作「被取締役新入社員」以来、一貫して“仕事する人”を描いてきた。

 「仕事って、人生で一番長い時間を費やすもの。ある意味では自分を消しながら仕事するわけだけど、その消し方というか仕事への関わり方でその人の人間味が出ると思う」

 原点は、曲折を経た自身の経験にあるという。1歳から小学3年まで福岡市で過ごし、東京に転居。大学時代はバンドデビューを目指し、就職が決まった企業を内定式の数日前に辞退した。音楽の道を諦めた後、就職した学習塾は「いわゆるブラック企業」。2、3時間しか睡眠がとれない日々で体を壊して業界紙に転職したが、3カ月でクビに。その頃から小説を書き始め、IT関係のベンチャー企業などを経て関東の地方自治体に入庁。デビュー後も公務員として働きながら土日を中心に執筆している。「いろんな仕事でいろんな人と接してきたことがキャラクターづくりの基。今も組織で働きながら書いているからこそ見えるものがある」と語る。

 9作目となる本書は、印刷や製本に携わる約20人に3年をかけて取材し、5章からなる約380ページの長編に仕立てた。原稿を版にするDTPオペレーター、紙を生き物のように扱って特殊な色をつくり出す職人肌の工場作業員、編集者と現場の板挟みになりながら諸条件を調整していく営業…。物語が本というカタチを得るまで、さまざまな人が携わっていることに驚かされる。「僕自身、印刷製本について全然知らなかった。本をモノとして作っている人たちがいることを改めて意識しました」

 時代の流れで紙の本が減り続けていく中、主人公が語る言葉が印象的だ。〈本が消えてゆく恐怖に慄(おのの)いている暇などない。自ら選びとった場所で縁を得た人たちと、これからも本を作っていくのだ〉

 それは作家の宣言にも思えた。

=2018/04/07付 西日本新聞朝刊=

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