『新 移民時代』 西日本新聞社編 (明石書店・1728円)

『新 移民時代』  西日本新聞社 編  (明石書店・1728円)
『新 移民時代』  西日本新聞社 編  (明石書店・1728円)
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 私は過去10年間、外国人労働者の取材を続けてきた。その私から見て、日本で働く外国人で今、最も虐げられた存在は「留学生」だと断言できる。

 ベトナムやネパールなどアジアの新興国出身者が急増し、留学生は30万人近くを数えるまでになった。彼らの多くは勉強よりも出稼ぎが目的だ。「留学」を装っての出稼ぎが、政府の進める「留学生30万人計画」、そして未曽有の人手不足のもとで黙認されている。

 出稼ぎ留学生たちは、母国の年収の10倍以上にも及ぶ留学費用を借金して入国する。日本で働けば、簡単に返せると考えてのことだ。しかし、日本語の不自由な彼らが就ける仕事は、最低賃金レベルのものばかりだ。留学生のアルバイトとして許される「週28時間以内」を超えて働いても、借金はなかなか減らない。

 借金を抱えて帰国すれば家族丸ごと破産してしまう。借金返済と学費の支払いに追われながら、出稼ぎを続けるしか道はない。そんな彼らを日本語学校、日本人学生にそっぽを向かれた専門学校や大学、人手不足の企業が都合良く利用している。

 こうした実態を知る日本人は少ない。大手メディアが全く伝えないからである。

 全国紙の配達現場は、留学生頼みが最も著しい職場の一つだ。東京都内では、配達員全員が留学生という販売所すらある。朝夕刊を配達すれば仕事は「週28時間以内」では終わらず、違法就労が横行している。出稼ぎ留学生の問題を紙面で取り上げれば、自らの配達現場に火の粉が及びかねない。それを恐れ、全国紙は報道を避け続けている。

 そんな中、西日本新聞は問題に着目し、キャンペーン報道を展開した。その連載をまとめたのが本書である。連載時から反響は大きく、行政から日本語学校などへの監視は強まった。とはいえ、出稼ぎ留学生の流入は止まっていない。新聞業界のタブーに切り込んだ同紙に敬意を表しつつ、続報を期待したい。

 (ジャーナリスト 出井康博)

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 取材班は社会部や都市圏総局、経済部などで編成。連載は2016年12月~17年8月。第17回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞を受賞した。


 2018/01/07付 西日本新聞朝刊

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