ダム反対 住民の日常映画に 長崎・川原が舞台 「ほたるの川のまもりびと」 山田監督 古里守る姿「共感」

「川原の人たちは魅力的で、その暮らしの豊かさを伝えることでダム建設の不条理さが伝わると思った」と語る山田英治監督
「川原の人たちは魅力的で、その暮らしの豊かさを伝えることでダム建設の不条理さが伝わると思った」と語る山田英治監督
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川原の人たちのふるさと愛が伝わってくる「ほたるの川のまもりびと」のポスター
川原の人たちのふるさと愛が伝わってくる「ほたるの川のまもりびと」のポスター
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 長崎県と佐世保市が長崎県川棚町川原(こうばる)地区に計画する石木ダム建設に、半世紀近く反対運動を続ける住民13世帯の日常を記録したドキュメンタリー「ほたるの川のまもりびと」が今月から、佐賀市を皮切りに公開される。博報堂の広告マンだった監督の山田英治さん(49)は3年前、現地で出会った人々の姿に心を動かされ、映画化を決意した。

 山田さんが知人の誘いで川原を訪ねたのは2015年春。自然の中で稲作をして、一つの家族のように暮らす住民たち。東京の都会生活者の目には「あこがれの里山暮らし」に映った。

 住民たちは長年ダム問題に翻弄(ほんろう)され、古里を守ろうと反対のデモや座り込みを続けている。最初に出会った男性は、子どもの頃に住民とともに機動隊に向かって「帰れ、帰れ」と叫ぶ写真を見せてくれた。今は4人の子の父親だ。山田さんは「何だか悔しくて無念で切なくて、いつの間にか泣いていた。水需要が増すとは思えないのに、行政は造ると決めたから造るという。ダムが本当に必要か議論がないまま、里山が失われようとしている。不条理と憤りを感じた」。さっそく帰りの飛行機内で企画書を書き、クラウドファンディングで製作費を募った。

 博報堂で自動車や原発関連のCMを作ったが、東日本大震災後、被災地のNPO法人をPRするボランティア活動に踏み込んでからは、社会の課題解決のためのCMを扱うようになり、自治体の地域戦略にも関わった。今春、博報堂を退社して独立した。

 以前はマスクとヘルメット姿で社会運動に取り組む人たちは「怖い人たち」との偏見があった。しかし、現地の監視小屋のおばあちゃんたちは、韓流ドラマを楽しみ、おしゃべりが好きな普通の人たちだった。

 「身近な人たちが自分の暮らしを守るためにやっている。細胞レベルで全身がリセットされた」。広告マン魂に火が付き、川原の今を伝えたいと選んだ媒体がドキュメンタリーだった。

 今、民主主義の危機とまでは思わないが、忖度(そんたく)が過ぎて議論が起きにくい時代と感じる。「おかしいと思ったことは、普通に言いましょうよ、と。ダム問題もオープンに議論できれば」

 ●九州での公開 佐賀で22日から

 九州での公開は、佐賀市のシアターシエマで22~28日、熊本市のDenkikanで23~29日、北九州市八幡東区の東田シネマ(市環境ミュージアム内)で7月27~29日などを予定。

 ▼石木ダム 長崎県や佐世保市が川棚町川原の石木川に建設を計画する利水・治水用ダム。1972年に予備調査に着手し、75年に建設省(当時)が計画採択。2013年に国土交通省が事業認定し、県は昨夏から付け替え道路工事を本格化。移転対象の13戸の住民が反対運動を続けている。住民側は国を相手に事業認定取り消しを求めて長崎地裁に提訴しており、判決は7月9日の予定。

=2018/06/16付 西日本新聞朝刊=

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